役者絵や美人画で人気を博した歌川国貞と、「武者絵の国芳」として名を馳せた歌川国芳。幕末の江戸を熱狂させた二人の浮世絵師を、「春画」という視点から見比べる展覧会「歌川国貞・歌川国芳 新宿歌舞伎町春画展WA」が、新宿・歌舞伎町で開催される。会期は2026年10月3日(土)から11月29日(日)まで。

役者絵の国貞、武者絵の国芳。二人の人気絵師が描いた春画
「豊国にかほ(似顔)、国芳むしや(武者)、広重めいしよ(名所)」
幕末の評判記『江戸寿那古細撰記』にこう記されたほど、国貞(三代豊国)と国芳はそれぞれの得意分野を代表する存在だった。二人はともに初代・歌川豊国に学んだ兄弟子と弟弟子。
兄弟子の歌川国貞は、役者絵や美人画を得意とし、生涯に手がけた作品は1万点を超えるとされる多作の絵師。江戸時代のベストセラー作品『偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)』の挿絵でも人気を集め、その大流行のなかで、のちに「三源氏」と呼ばれる春画三部作を制作した。

歌川国貞 色摺大本『正写相生源氏』天/嘉永4年(1851)頃/浦上蒼穹堂蔵
一方、弟弟子の国芳は、31歳頃に『通俗水滸伝豪傑百八人之一個』で人気を集め、「武者絵の国芳」として知られるようになった。大胆な武者絵のほか、奇抜な寄せ絵や猫を擬人化した戯画など、自由な発想による作品を残している。そして春画では、そうした作品とはまた異なる、美人画としての魅力が際立つという。

歌川国芳 色摺半紙本 『秋の七種続編(あきのななくさぞくへん) 』 下/天保3年(1832)/浦上蒼穹堂蔵
本展では、そんな二人が描いた春画と、それぞれが得意とした役者絵や武者絵をあわせて展示。同じ「春画」を描いたとき、二人の個性はどのように現れるのか。その違いを見比べることができる。
1mmに3本。浮世絵版画の技術を極めた「三源氏」
本展最大の見どころとなるのが、国貞による春画三部作、通称「三源氏」が一堂に会することだ。
『源氏物語』の舞台を室町時代に移した『偐紫田舎源氏』による「源氏絵」ブームのなかで生まれた、『艶紫娯拾余帖(えんしごじゅうよじょう)』『花鳥余情 吾妻源氏(かちょうよじょう あづまげんじ)』『正写相生源氏(しょううつし あいおいげんじ)』の3作品である。



1枚目:色摺大本『艶紫娯拾余帖』月/天保6年頃(1835)
2枚目:色摺大本『花鳥余情 吾妻源氏』天/天保8年(1837)
3枚目:色摺大本『正写相生源氏』天/嘉永4年(1851)頃
すべて浦上蒼穹堂蔵
注目したいのは、描かれている内容だけではない。
髪の毛などをわずか1mmの幅に3本彫り分ける「毛彫り」、紙に凹凸をつける「空摺」、光沢を出す「艶摺」、さらに金摺や銀摺まで。絵師だけでなく、彫師、摺師の高度な技術が惜しみなく注ぎ込まれ、「三源氏」は浮世絵木版画の最高峰とも評されている。なかでも1851年頃に制作された『正写相生源氏』には、雲母や金、銀が贅沢に使われ、「三源氏」の中でも随一の豪華さを誇るという。
春画というと、つい描かれた内容に目が向きがちだ。しかし細部に目を凝らせば、そこには江戸の浮世絵版画の高度な技術が詰め込まれている。本展は、春画を「浮世絵」として改めて見る機会にもなりそうだ。
俵万智と千葉雄大が「声の案内人」に

さらに今回は、「新宿歌舞伎町春画展WA」シリーズで初めて音声ガイドを導入する。「声の案内人」を務めるのは、歌人・俵万智と俳優・千葉雄大。
俵万智は、国貞の「三源氏」がもとにしたと思われる『源氏物語』と『偐紫田舎源氏』を紐づけながら、描かれた場面やそこで詠まれた歌を解説。千葉雄大は、春画や絵師、作品など、展覧会全体の魅力を案内する。
音声ガイドは会場に掲示されたQRコードから、自身のスマートフォンで無料で聴くことができる。英語版も用意され、展示解説も日本語・英語を併記する。
会期中には、春画ールによるガイドツアーやホストによるくずし字講座のほか、落語、カツベンなど6企画・全15回のイベントも予定されている。企画の詳細・全日程・申し込み方法は以下のオフィシャルウェブサイトをチェックしてほしい。


「歌川国貞・歌川国芳 ー新宿歌舞伎町春画展WA」
https://www.smappa.net/shunga/ticket.html
会期:2026年10月3日(土)〜11月29日(日)
前期:10月3日(土)〜11月1日(日)
後期:11月3日(火・祝)〜11月29日(日)
※11月2日(月)は展示替えのため休館
時間:11:00〜21:00(最終入場20:30)
会場:新宿歌舞伎町能舞台/ホストクラブBOND
出展作品:歌川国貞・歌川国芳の春画・浮世絵 約100点
料金:一般 前売1,900円/当日2,200円、学生 前売1,200円/当日1,500円
※18歳未満入場不可
※音声ガイド無料、日本語・英語対応