太古の時の流れが宿る有機的な自然の造形を、ガラスで創出するアーティストのヘロン範子さん。2012年から自身のブランド「NORIKO HERRON GLASS+ART」を立ち上げ、ジュエリーを中心に、石膏や漆喰にガラスを散りばめたアートボードからシャンデリアといったインテリアの造形まで幅広い作品を手掛けている。2023年には、ヴェネチアで開催されているガラスのエキシビション「The Transparent Breath 2023」の招待アーティストとして選出。躍動的でエモーショナルなガラスのジュエリーは、各国のジャーナリストからも注目を集めた。

左:自らデザインしたジュエリーを纏うガラスアーティストのヘロン範子さん
右:新設された「NORIKO HERRON GLASS+ART」のギャラリー&ショップ
これまでは拠点を定めず、ギャラリーを中心に個展やアートイベントで作品を展開してきた。「いつかは、自分らしい空間で作品を満たしたい」という願いを実現したのが2025年4月。作品と呼応するようなソリッドな世界観が凝縮したギャラリー&ショップがオープンした。


1枚目:火山による溶岩が流れ込んだ黒いビーチと、流氷の煌めきが溶け合うような黒漆喰の作品「ボルケーノ」など新作も並ぶ
2枚目:手前は代表作のシャンデリア「アンジェリカ」
「基本的には自分でイメージを描きながらバーナーワークをするのですが、時にはガラスが溶けたい方向を尊重します。偶発的なフォルムから、新たな創造意欲を掻き立てられます」と語るヘロンさん。自らの人生も、意図しない発見を楽しみ、偶然の出会いを受け入れながら切り開いてきた。
ヘロンさんが創作活動をはじめたきっかけは、アメリカ人の夫と結婚し新居の照明を探していた時のことだ。日本では好みのデザインに出会えないとわかると、「“ない”ものは、作ればいい」という思いから、アイアンワークに海外で求めたガラスパーツを組み合わせて、シャンデリアを制作。どこにもないアーティスティックな造形を創り出したことに高揚感を覚え、やがてガラスという素材に惹かれて、まずは吹きガラスのスタジオへ通う。




ヘロンさんのジュエリーは、大胆でボリュームがありながら、身につけると不思議とボディラインに寄り添う。
好奇心が形を成したのは2008年のこと。「アルティジャーノ」コレクションと称し、シャンデリアや石膏アートを発表する。さらに、透明度が高くと硬度に優れたホウケイ酸ガラスの技を習得し、まるでオブジェを纏うようなジュエリーの製作に至ったのは2012年のこと。インテリアとファッションの垣根を越えて、ボーダーレスに個人のアイデンティティを託すジュエリーデザインを目指し、自身の名を冠した「NORIKO HERRON GLASS+ART」を立ち上げる。


シャンデリアに掬っていた蜘蛛の巣が光に美しく反射していたことに着想した代表作「スパイダーシリーズ」
溶変するガラスに情熱を注ぎ込み、イマジネーションが開花したジュエリーは、他に類を見ないデザインばかり。たとえば、ブランドの真骨頂ともいえる「スパイダーシリーズ」は、メタリックな加工を加えることでシェイプそのものが浮き立つとともにファッション性をも際立たせる。また、極めて扱いが難しい黒ガラスを用いた「Black Glass」シリーズのネックレスは、留め具としてデザインしたフックの通し方次第で、幾通りもの着けこなしが楽しめる。さらに、躍動的なフリルのようなネックレスは、古い梅の木に付着した苔がインスピレーションソース。造形の背景にある物語からも、ドラマティックな鼓動が聞こえてくるようだ




エモーショナルな組み合わせ方も、ヘロンさんの真骨頂といえる。
ヘロンさんの唯一無二の作品が一堂に介するギャラリー&ショップは、不定期オープン。完全アポイント制の「プライベートビューイング」のスタイルを大切にしている。その理由は大胆にして繊細、眩い輝きと静謐なまたたきが交差するジュエリーやアートを、貸し切りの空間で楽しんでほしいという意図が込められているためだ。既存の作品をベースにしたカスタムオーダーをはじめ、ジュエリーのスタイリング術をアーティスト本人からアドバイスしてもらえることも「プライベートビューイング」ならではの魅力だ。変幻自在なガラスの可能性に満ちた、贅沢な時空を是非一度訪れてはいかがだろう。
写真提供:NORIKO HERRON GLASS+ART
NORIKO HERRON GLASS+ART
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷3-8-6Lapis原宿1階
Webサイト:https://www.norikoherron.com/