5月10日から5月12日までの3日間にわたり、恵比寿ガーデンプレイスの30周年を記念して開催されたEBISU Bloomin’ JAZZ GARDENは、音楽、食事、アーティストのラインナップ全てが高いレベルで実現されたフェスだった。本記事では最終日に実際に筆者が訪れて感じたことと、Blue Lab Beatsのパフォーマンスに関するレビューをお伝えしたい。
Photo by Naoki Okuda
誰もが楽しめるイベント
恵比寿ガーデンプレイスに近づくと早くも音楽が聞こえてきた。入り口のほど近く、BLUE NOTE PLACEの外に位置するホワイトスクエアでは、国内のクラブシーンで活躍するDJたちがパフォーマンスを行い、野外のダンスフロアを盛り上げていた。BLUE NOTE PLACEの店内には予約席が設けられ、日本および海外のアーティストやDJによるパフォーマンスをゆっくり楽しむことができたようだ。
中央広場のグリーンステージの周辺には人工芝と木のブロックが配置されており、ピクニック気分で初夏の爽やかな風と音楽を味えるようになっていた。自由観覧のため、思わず足をとめ演奏を楽しむ通行人の姿も見られた。
RODA DO マルセロ木村 /Photo by Eiji Miyaji
冷たいビールや飲み物を販売するバーも設置されていたが、近隣のショップやコンビニで購入したものも持ち込み可能だった。家族連れ、カップル、多くのペット連れの姿も見られ、さまざまな年齢層の人々が演奏を楽しんでいた。
特筆すべきはアーティストやDJのラインナップだ。様々なジャンルを網羅しながらも見事に調和している。日本人だけでなく海外からのビジターも多く、その規模にもかかわらず、巧妙にレイアウトが設計されていたため混雑を感じることもなかった。
YANCY & 井上銘 with 大和田慧/Photo by Naoki Okuda
キューバサンド・フェスティバル
恵比寿ガーデンプレイスの入り口付近のパビリオンには数々のフードトラックが並び、食欲を誘う匂いを漂わせていた。 ロウリーズ・ザ・プライムリブはプライムリブカレーを提供し、カジュアルかつ手頃な価格で高級店の味を楽しめるとあって、かなりの人気だった。ウェスティンホテル東京のトラックではナチョス、ジェラート、ソルベ、各種ドリンクなどのピクニックらしいメニューが販売されていた。
Photo by Mahiro Sayama
「アメリカンポーク・キューバサンド・フェスティバル」には、3つのキューバサンドウィッチ店が出店していた。映画「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」の影響を受けた米国製の大型フードトラックは、岐阜からやってきたDUCK DIVE(ダック・ダイブ)。2023年にフロリダで開催されたCUBAN SANDWICH FESTIVALのノン・トラディッショナル部門で優勝したということもあり、常に長蛇の列だった。トーストされた香ばしいパンからローストポークやチーズが溢れ、かぶりつくと豊かな風味が口いっぱいに広がった。屋外のテーブルではホワイトスクエアの音楽も聞こえるため、DJを楽しみながら食事ができ、最高の気分だった。
Photo by Vince Lee
さらに、恵比寿ガーデンプレイス内の全ての店舗も通常通り営業していたため、しっかり食事したい人には館内のレストラン、食後のコーヒーならスターバックスやヴァーヴコーヒーロースターズなどのコーヒーショップも利用可能と、フェスとは思えないほど快適に過ごすことができた。
Blue Lab Beatsによるパフォーマンス
各日の締めくくりには、ザ・ガーデンホールのイエローステージとザ・ガーデンルームのレッドステージで、ヘッドライナーによるパフォーマンスが展開された。10日(金)は黒田卓也や大沢伸一、11日(土)はマリーザ・モンチ、そして私が訪れた12日(日)は、UKジャズの新世代デュオ、Blue Lab Beatsが出演した。
現在、UKジャズシーンはルネッサンスを迎えており、新世代の才能あるミュージシャンたちが新しいエネルギーを注ぎ込み、ジャンルの境界を押し広げている。DJやラジオ、フェス、ジャーナリスト、レコードレーベル、アーティスト同士の協力的な精神などが、地域の豊かな音楽史と相まってジャンルを新たな高みに引き上げる環境が整っている。Blue Lab Beatsはこの概念を体現しており、ジャズ、ヒップホップ、R&B、アフロポップ、エレクトロニックを組み合わせて独自の革新的なサウンドを形成している。
そしてこの日Blue Lab Beatshは、彼らが初来日した2022年からの成長と進化、そして音楽性を見事に表現したパフォーマンスを披露した。
1枚目:NK-OK、2枚目:Mr DM/Photo by Naoki Okuda
イエローステージの入場はチケット制となっており、17時30分に開場した。オープニングDJとしてMAHBIEが登場し、定番のヒップホップとR&Bをプレイして開場をあたためた。18時30分になると、照明が暗くなり、Blue Lab Beatsがステージに登場し、観客からの大歓声が湧き上がった。プロデューサーのNK-OKはNative Instrumentsのサンプラー”Maschine”を操作するために壇上に上がり、マルチ奏者のMr DMはヤマハのキーボードとエレキギターの前に座った。
そして、スペシャルゲストとしてサックス奏者の馬場智章、トランペット奏者の寺久保伶矢が加わった。さらに、ロンドンのドラマー兼プロデューサーのMackwoodがドラムを担当。曲によってMr DMがギターに切り替わる際に、キーボーディスト兼プロデューサーのKan Sanoがキーボードで参加した。
Photo by Naoki Okuda
90分間のショーでは、最新アルバム『Blue Eclipse』からの楽曲や過去の楽曲が披露された。Blue Lab Beatsの楽曲プロダクションは通常デジタル要素を大きく取り入れているが、今回は生の楽器演奏で行われたこともあり、彼らの幅広い芸術性を肌で感じることができた。
Mackwoodのドラムの迫力に加え、サックスとトランペットのソロパート、Mr DMのキーボードとギターで奏でるサウンド。そこにNK-OKが素早くパーカッションのレイヤーを追加したりしながらスムーズな音楽を作り上げていった。
ボーカルの入る曲では、Daichi YamamotoとKona Roseがラップセクションとボーカルを担当。それぞれが持つ個性が加わることでBlue Lab Beatsの楽曲をさらに魅力的に演出した。
Photo by Naoki Okuda
セットリストには、ヒップホップからジャズ風のインストゥルメンタル、R&B、さらには複数のジャンルを実験的に融合させたサウンドまで、様々な音が含まれていた。また彼らは伝説的なプロデューサーJ Dillaに敬意を表し、彼の「So Far To Go」を演奏した。そして最後にBlue Lab Beatsの楽曲のうち最もストリーミング回数の多い「Pineapple」を演奏し、「A Vibe」のアンコールで締めくくられた。
Photo by Naoki Okuda
デジタル技術が向上したことで楽曲制作の際の自由度は広がったが、その反面ライブパフォーマンスで演奏することが難しい曲も増えてきている。しかし、Blue Lab Beatsは革新的なアプローチで素晴らしいショーを作り上げた。ゲストとして日本のミュージシャンやアーティストを参加させたことも、このパフォーマンスを無二のものにする要素となっていた。オーディエンスにとっても忘れられない体験となり、素晴らしい夜となった。
ショーが幕を閉じ20時が近づくと、グリーンステージのスポットライトは徐々に暗くなり、DJたちが最後の曲をかける間に人々は余韻に浸りながら駅へと向かう。
EBISU Bloomin’ JAZZ GARDENは、恵比寿ガーデンプレイスならではの上質な食と音楽といったコンテンツで構成されており、まさに大人の街・恵比寿を味わえる音楽フェスだった。今後も恵比寿ガーデンプレイスではさまざまなフェスティバルが開催されるため、定期的にチェックしてほしい。
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