チームラボのアートに没入しながら食す新感覚ヴィーガンラーメン「Vegan Ramen UZU」京都

世界各国から観光客が訪れるからだろうか、京都にはヴィーガン料理を出す店が多い。精進料理のエッセンスを取り入れたフュージョン系も続々と生まれ、ちょっとした食文化圏を形成しつつある。
今回はその1つ、ヴィーガンのラーメンを提供するという「Vegan Ramen UZU Kyoto」を探訪した。

通路を抜け、異世界的へ

店が位置するのは、京都御所の南東の角から数百メートル下った、新烏丸通沿い。瓦葺きの町屋風な建物に、ぽっかりと矩形の入口が開いており、鮮やかな板壁の通路も見える。のれんはなし、食品サンプルもなしで、通りがかってもここがラーメン店とはわからない。控えめな屋号の表示だけが、初めての予約客にここが目的地であることを教えてくれる。

通路をくぐると、唐突に異世界的な空間に出迎えられる。壁面を巨大なディスプレイが占め、そこには墨色の流体が、生命を持っているかのように、ゆっくりとのたうっている。部屋の中央に鎮座する漆黒のテーブルにそれが反射し、雰囲気をより幻想的なものとしている。天井に照明はあるが、それはあくまで料理をピンポイントで照らす役割にすぎない。

チームラボとのコラボレーションで誕生した店

この空間を支配する映像の水墨画は、デジタルコンテンツの制作会社として有名なチームラボの手によるもの。作品名は、《反転無分別 – Black in White》という。ジャンルとしては「空書」(空間に書く書)とされ、公式サイトでは「作品空間の中を全て同一方向に回転しているが、『超主観空間』の特性として、視覚的には、左回転も右回転も論理的に同等となる。そのため、意識によって、書は、左回りにも、右回りにもなる」と説明されている。取材に対応してくれた同店の五嶋さん(下写真)によれば、店がオープンしたのは2021年。チームラボと組んだのは、「食すこと、さらには生きることと向き合えるような空間になることを願って」との意図があったという。

前菜の重層的な風味を堪能

五嶋さんに案内され、席につく。テーブルは1卓だけで、16の椅子が取り囲む。つまり全員相席となるのだが、知らない人が隣や向かいに座ることに、不思議と抵抗感はない。五嶋さんは、「隣り合った国籍や言語も違う他人同士での会話を楽しんでいただきたい」と語る。

メインとなるUZU signature courseでは、主菜のラーメンを2種類から選ぶことができる。ドリンクを時折口に運びながら、動く水墨画をながめていると、ふと回想に囚われる。そういえば、筆者がヴィーガンとなり、瞑想も始めてから6年も経ったんだな、と。前衛的なデジタルアートが、自身の精神に不思議な安寧をもたらしてくれるのを感じる。

前菜の「ヴィーガンチーズと八ツ橋」が運ばれてきて、我に返る。無地の高台鉢にカカオハスク(カカオ豆の外皮)が盛られ、その上にちょこんと乗っているのがそれだ。「そのまま一口で食べてください」と促される。これまでの人生で体験したことのない味が、口の中で広がる。最初はスモークチーズ、それから何かスパイシーなものへと変化し、最後は八ツ橋のほのかな甘みで締めくくられる。後で教えてもらったが、人参、ビーガンマヨネーズ、ミョウガ、春菊のソースも素材に使われているという。これらの隠し味が、複雑で重層的な風味の旋律を奏でていたのだ。

ヴィーガン料理の固定観念を覆す味わい

メインとなるラーメンは、「醤油&蓬の発酵液」か「辛味噌&酒粕」のどちらかを選ぶかたち。今回は特別に両方を注文し、賞味し比べた。

まず、「醤油&蓬の発酵液」から。醤油は自家製の細麺に練り込まれ、スープは昆布と椎茸をベースに、蓬の発酵液を加えたものだという。五嶋さんが、「麺と具は混ぜるのではなく、手前側から召し上がり、味の変化をお楽しみいただく趣向です」と説明。それに従い、麵をひとすすりする。

正直に告白すると、初めて感じる味わいを文章で表現するとき、いつも悩む。今回もまさにそう。まず、「ラーメンとはこういう味」「ヴィーガンだからあっさり風味」という固定観念が覆された。スープをからめた麺は、濃厚にして深いコクがあり、未体験の旨味が舌の上で競演する。続いて、具材のトマト、ほうれん草、黒舞茸が、食体験に新たな彩(いろどり)を与えてくれる。五嶋さんを前に、ひたすら無言で箸を進めるのも悪いと思い、感想を述べようとしたが、言葉が出てこない。かろうじて、「生まれてはじめての不思議な味ですね」と陳腐なコメントを発し、自己嫌悪の念をおぼえた。

続いて「辛味噌&酒粕」。麺は平麺となり、具材も一部変わったが、何よりも大きな違いがスープだ。さらに濃厚でありながら、清涼感を伴うピリッとした辛味がしみわたる。五嶋さんによれば、自家製のラー油と豆板醤で辛さを演出し、オーツミルクで若干マイルドにしているという。コクの深さは豚骨ラーメンを連想させたが、より繊細であり、動物性食材を使わずに、この風味を出せることに讃嘆した。

同店は、「ミシュランガイド京都・大阪」の「ミシュラングリーンスター」を2年連続、さらに「価格以上の満足感が得られる料理」として、ミシュランのビブグルマンを5年連続で獲得している。その栄冠に見合う料理であり店であると、素直に思う。ヴィーガンであるか否かに関係なく、一度は訪れてみることをすすめたい。

Vegan Ramen UZU Kyoto
京都府京都市中京区梅之木町146
営業時間: 12:00〜14:45(L.O. 13:30)、17:30〜22:00(L.O. 21:00)
定休日: 不定休
ウェブサイト: https://vegan-uzu.com/pages/uzu-kyoto
Instagram:@ramen_uzu

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Takuya Suzuki

老舗翻訳会社の役員を退任後、ライター、写真家、ボードゲームクリエイターとなる。神社仏閣・秘境めぐりをライフワークとし、撮った写真をInstagramに掲載している。@happysuzuki

Photo by Ryo Namba

フォトグラファー/ビデオグラファー。東京で活動後、2023年に京都に移住。関西と東京の二拠点でフットワーク軽く活動中。最近の趣味は、落語、将棋、料理を作って妻が集めた食器に盛り付けること。 https://ryonamba.com

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