【My Secret Place】NEWORDERの3人とパンクな町 三軒茶屋(後編)

トレンドやカルチャーなど日頃から感度の高いクリエーターたちにお気に入りの場所を紹介してもらう連載企画第2回、三軒茶屋(後編)。今回は異なる個性が集まり形になったファッションブランド「NEWORDER」の三人、俳優の駿河太郎、スタイリストの丸山晃、ファッションデザイナー清水護に行きつけの店を案内してもらった。前編はこちら

俺と心中しよう。 by 丸山晃

 —3人の出会いについて教えてください。

@茶沢通りにある「五臓六腑本店」100種を超える焼酎と新鮮な魚介料理を楽しめる。

清水護氏(以下、清水):俺が独立する頃にアキラさん(丸山)と出会ったんだけど、バーでDJやってたよね。上裸で

丸山晃氏(以下、丸山):昔はよく脱いでたんですよ

清水:最近もたまに脱ぐやん

丸山:脱ぐ脱ぐ。うちの一族みんなそう。脱げるのが一人前なんですよ、うちは

清水:それで、俺が独立した時に、この人(丸山)に、「俺と心中しよう」って言われたんですよ

 —何歳くらいの時ですか?

清水:俺25

駿河太郎氏(以下、駿河):じゃ、もう20年くらい経つってことや

清水:うん、20年は経つと思う。スタイリスト(丸山)とデザイナー(清水)だからさ。「俺と組めば売れるから!」って自分で言ってきて

丸山:全然覚えてねぇな

駿河:マモ(清水)の才能を感じ取ったんやろな(笑)。今でも「anglasad(アングラサッド:清水が展開する別ブランド)」が、自分じゃないスタイリングの時とか「俺にやらせろよ」って言ってるもんね(笑)

清水:最初のほうは、スタイリストの仕事が分かってなかった。自分たちでやってたから。でも一回目のキネマ倶楽部でやったコレクションで、ランウェイやる時に、アキラさんに頼んで。そっからずっとお願いしとるよ。浮気してない

駿河:懐かしいなキネマ倶楽部。大変やったもんね(笑)

丸山:だってショーの前日に服がねぇんだよ!(一同笑)
モデルが来てもフィッティングできない。服ねぇから。どーすんだよこれって(笑)

清水:タロちゃんは全然別の時に、ある先輩に紹介してもらって一回飲みよったんやけど、お互いその時は、端と端にいたから全然喋らなくて。それから一週間後に俺が店(祐天寺)で展示会しとって、外でタバコ吸いよったら、学大の方からタロちゃんが歩いてきて。「先週あったよね?」みたいな。そんで展示会見てってくれて「ええなぁ!」って言ってくれて。そっから友達になった。毎日遊ぶようになったよな?

駿河:そうやねぇ。もう10年くらい経つ気がするなぁそろそろ

清水:最近の感覚でいたけど、10年くらい経つのか。今の店も18年やもんな

駿河:俺がアキラさんと出会ったのってショーの時じゃない?

清水:あ、そうだ。うち(Mitsume Tokyo)の10周年の時だ。キネマ倶楽部。タロちゃん(駿河)にモデルで歩いてもらって、その時のスタイリングがアキラさんだったんや

3人の関係性

清水:歳でいうと、俺が一番下で、タロちゃんが俺の1個上、アキラさんがその上だから、高1(清水)、高2(駿河)、高3(丸山)ってかんじ

高1

高2

高3

 —まとめ役は清水さんですか?

清水:いや、タロちゃんかな

駿河:いや、どっちもやな。ケースバイケース

丸山:俺じゃねーことは確かだ

清水&駿河:うん(笑)

清水:少年やけん。アキラさん

 —出会ってから、お互い変わったと感じる部分はありますか?

清水:アキラさんは大人になったよね?結構嫌われてる人やったけん。気難しいし、めんどくさいから(一同爆笑)

丸山:人の意見を聞かないしね(笑)

駿河:今までやってなかったドラマとかのスタイリングもやるようになったよね。「アキラさんドラマやんの?大丈夫っすか?!」って思ったもん

清水:ずっとブチ切れてるんじゃない?みたいな(笑)。この人、アーティスト寄りだから、人にとやかく言われたくない。うるせぇなっていつも言ってる

丸山&清水:「しらねぇよ」と「うるせぇな」!(笑)

NEWORDERが丸山にもたらした変化

 —ドラマのお仕事をやるようになって丸くなったんですか?

駿河:NEWORDERやりだしたくらいかなぁ

丸山:俺にも色々あって。独立したての時は勢いもあったし、周りも“スタイリスト・丸山晃”を重宝してくれてた時期でもあったから、すごい天狗になっちゃってたんだよね。それでやりたい放題やってたら、やっぱ干されたよね (一同爆笑)
一旦干されるから(笑)。そっからがやっぱ人間味が出てくるっていうか。そうなってもずっと使ってくれる人がいて、そういう人の話をよく聞くようになったりね

 —やっぱりそういう経験も必要なんですね

丸山:必要。そっからのクリエイションのほうが面白くなってきてるしね

清水:‘調整’おぼえたから

丸山:そうそうそう

@鉄板・広島府中焼き 福一(ぷくいち) カリカリに焼けた薄い生地の食感と、焼きそばの食べ応えがたまらない。

「お互いのことを、それぞれを一言で表すなら?」と質問してみると、清水と駿河の思う丸山はやはり「少年」。清水と丸山がいう駿河は「いつも通り」。変わらない自然体が駿河太郎ということなのだろう。駿河と丸山に、清水の印象を聞くと…

駿河:俺は一個出てるけど、言ったら引っ張られるから後から言う(笑)。アキラさんが思う、マモルの形容詞ってなに?

丸山:うーん…なんだろ…「前」?

清水&駿河:…「前」?!!!!

丸山:前しか見てねぇみたいな…

清水:もうちょっと何かあんだろ、言葉として!!

駿河:アーティスティックすぎる(笑)

 —駿河さんから見て清水さんは?

駿河:俺的には、マモルはもう「ブレ知らず」。俺の「いつも通り」とマモの「ブレ知らず」はちょっと違うんよな。でも、言うて全員「ブレ知らず」やけどな(笑)

清水:アキラさんは最近、そこにちょっと柔らかさを手に入れたんよな。しかもその過程も見てるから、それがおもろい。この人はずっと独りでやってきたから、社会性が全く身についてなくて、俺らと一緒にやるようになって色々学んでるんや。だからこの3年の伸び代が半端じゃない

仲良しの店長と。ダブルピースが丸山流

@にくにくシゲル 牛・豚・鶏・鴨・馬・羊と様々な肉が楽しめる。お通しの手羽先の唐揚げがおいしい。

駿河:どっかに属するってことをしてきてない人だからね。誰かと協調するっていうのをやってない。師匠についてたから、トップダウンで言われて動くのは、やってきてるんやろうけど

清水:ほんで社会でたら、早くにポーンと売れたせいで天狗になって嫌われて

丸山:でもねぇ、評判悪い悪いって言うけど、それ祐天寺だけだよ

清水:いや青山あたりでも言われてるよ (一同爆笑)

広島焼きのぷくいち、肉料理のにくにくシゲルをハシゴしてすっかりお腹が膨れた3人は、行きつけのリルバーに移動。ブロンドのショートヘアがよく似合うよしこママが加わり、3人はますます素の姿を見せてくれた。

@リルバー

お店のスタッフの女性がトランペット奏者ということもあり、話題は丸山がプライベートで組んでいるバンドのことに。

清水:この人(丸山)、6年バンドやってて1回しかライブやっとらんけん。ボーカルがコロコロ変わって

丸山:存続の危機ですらある(笑)

 —どういう曲をやられるんですか?

丸山:それはもう、俺がつくった曲

清水:きっついなー(笑)

丸山:カバーでなんか勝負しませんよ

よしこママ:それで6年間で1回しかライブしてないなら、カバーにしてくれよ!(笑)

丸山:ヒス(HYSTERIC GLAMOUR)のパーティでライブやった時に、「カバー1曲くらい入れたほうがいいんじゃないですか?」って言われて。4対1くらいで、みんなカバーやろうって言ってたんだけど、「いや、全部オリジナルで行こう。カバーなんかいらんいらん!」っつって(笑)

清水:めちゃくちゃ心臓強ぇな!(笑)

よしこママ:お客さんの立場にもなってよ。めちゃくちゃしんどいやん!

清水:社会性が出てきたのこの3年くらいやけん。その前は結構やべーやつやった(笑)

寂しがり・丸山晃

「NEWORDER」の展示会は、東京・祐天寺のMitsume Tokyoにはじまり、神戸、愛媛とそれぞれ駿河、清水の出身地を回る”ツアー”という形で行われている

清水:アキラさんが仕事でパリから帰ってくる日、俺ら神戸で展示会やってて、成田から来るって言い出して

丸山:俺、行く気満々で連絡したら「来なくていい」って言われた

駿河:いやパリから帰ってきてその足で神戸来るって、俺やったらしんどいなと思って。俺やったら絶対いかへんし。だから無理して来さすのも悪いなって思って言ったんやけど

清水:でも絶対パリの風を俺らに感じさせようとしてるなって思ってた

丸山:意外にパリ独りだったから…。 人と話してぇ…って…

駿河&清水:寂しかったんだ!(一同爆笑)

駿河:結局、ゴロゴロ持って嬉しそうに来たもんな

丸山:この顔たちホッとするわぁって

清水:でも結局、カプセルホテルが嫌で「俺だめだわ、寝れねぇから帰る」っつって始発で帰ったやん

丸山:いやあの雑魚寝のカプセルホテルじゃどうにも寝られなかった。飲んでホテル着いたの夜中だったから、お風呂も清掃中で入れなくて、もう地獄のようだった

駿河:成田から品川行って新幹線で神戸きて…
清水:誰よりも打ち上げ楽しんで、始発の新幹線で帰ると(笑)

そして夜もだいぶ深くなり3人は’昨日もいた’という「空とミルク」に移動した。
「空とミルク」は駅前の通称三角地帯と呼ばれる戦後のバラックをそのままに残した風情が漂うエリアにある。この三角地帯は新宿のゴールデン街のようなイメージだが、お酒を飲むだけでなく美味しい料理が食べられるお店が数多いというのが特徴のようだ。小さなエリアだが、まるで迷宮のように様々なジャンルの料理屋が並んでいるので欲張りなはしご酒が楽しめる。

@空とミルク

ブルースなことをやっていたい

清水:極論言うと、俺らってデザイナーではないわけ。服好きなだけなの。ボキャブラリーが少なくて、デザイナーって言ってるだけで。デザイナーブランドとは違う。服好きブランドっていうか。

駿河:そうそうそう、ほんとそうよ。俺の延長線上にNEWORDER があるみたいな。巷にあふれてる服で、俺が着たいやつがなかなかなくて。惜しいなっていうのはあるけど。

つまり、NEWORDERは、3人の”欲しい”をそのまま形にしているとも言える。服と音楽が好きな3人にとってのリアルクローズなのだ。

清水:俺は売れたからって型数をバカみたいに増やす、みたいなことはしたくない。自分らが好きなものを好きなように作れるようになればそれでいい。

駿河:NEWORDERは、15~20 型くらいが MAX やな。ここ 4 年やってわかってきた。

清水:嘘のない状態でやっていこうと思ったら、だいたいそのくらいになっちゃう。自分が作ってない服を、ブランド名だけで売るようなことはしたくない。もうちょっとブルースな、生々しいことをやっていたい。ブランドってだいたいある時から手から離れていくものだけど、俺は離れさせんようにしてる。

駿河:離したくないよな。

清水&駿河&丸山:離し〜た〜くは〜ない〜♪

クリエイターの彼らが好んで三軒茶屋を選ぶ理由は、飾らないこの街の生々しさにブルースを見出すからかもしれない。この有機的で人間臭いカオスは、強烈な個性を持つ彼らを受け止める包容力があるのだ。

丸山晃 スタイリスト
専門学校を卒業後、馬場圭介氏に指示。2007年に独立し、雑誌、CM、アーティストのスタイリングや、ブランドのビジュアルディレクションなど幅広く手がける。
Instagram @akr__maruyama

駿河太郎 俳優
2003年、シンガーソングライター「taro」としてメジャーデビュー。その後、バンド「sleepydog」を結成し、ボーカル&ギターを担当。ミュージシャンとして売れない時代を経て、2008年俳優に転向。以降、映画やテレビドラマなどに多数出演しつつ、楽しんで低空飛行を続けている。
Instagram @tarosleepydog

清水護  ファッションデザイナー/プロデューサー
ギャラリーセレクトショップMItsuME TOKYOのオーナーであり、手がけるブランドは「anglasad」「NEWORDER」「SAMURAI CORE」「トトノイ」。
そのほか地域創生プロジェクトとして立ち上げた「THE BEYOND AND PRODUCTS 」では、自身が愛してやまないテレビドラマの不朽の名作である「北の国から」と初のアパレルコラボレーションアイテムを発表し「北の国から ’23冬」と銘打ち、2023年7月から発売が始まる。
Instagram @a.g.s.mamoru

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ZEROMILE 編集部

知的好奇心旺盛なミレニアル世代に日本の情報を発信。 「好奇心が心理的距離をゼロにする」をテーマに、編集部がピックアップした情報を掲載。

Photo by Atsuki Iwasa 岩佐篤樹

浅井健一やthe pillows、山崎まさよしなど数々のミュージシャンのライブフォトや、アルバムジャケット、ブランドのイメージビジュアルなどを手がける。「全てに宿るbluesをrealに記録」をテーマに作品を撮り続けている。
Instagram @blue_devils_picture

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