【My Secret Place】NEWORDERの3人とパンクな町 三軒茶屋(前編)

トレンドやカルチャーなど日頃から感度の高いクリエーターたちにお気に入りの場所を紹介してもらう連載企画第2回目。今回は異なる個性が集まり形になったファッションブランド「NEWORDER」の3人に行きつけの町を案内してもらった。

左から:駿河太郎、丸山晃、清水護

渋谷から2駅、車でも15分もかからない好立地ながらユニークな街並みが広がる三軒茶屋。その地名の由来は、江戸時代(17~19世紀)に社寺参詣ブームという旅行ブームがあり、その頃に三軒のお茶屋がこの地にあったことからその名前がついたといわれている。

戦後の混乱期に作られたバラック地帯が独自の進化を遂げ、現在はライブハウスや小劇場などがあり、音楽・演劇関係の人が集まる街としても有名だ。都心にも関わらずほどよく下町風情がありつつ、気さくながらも、店主が気に入らなければ入店させてもらえない店があるなど、パンクな町といった印象だ。

—三軒茶屋を選んだ理由は?

清水護氏(以下、清水):3人とも家が近いし、他の仲良い奴らも近所で、みんなの真ん中ぐらいが三茶やけん。最近はもう拠点みたいになっとる。

駿河太郎氏(以下、駿河):中目(中目黒)とかで飲んでた時もあったけど、結局三茶のほうがおもしろいし、コストパフォーマンス的に見ても三茶のほうがいいよねってかんじ。今思うとなんで中目で飲んでたんやろ?みたいな。

清水:そういえばアキラさん(丸山)誕生日に、行きつけの飲み屋の2階で盛り上がって、階段から落ちて、頭割ってシクシク泣いてたよね。

丸山晃氏(以下、丸山):そうそうそう(笑)。

清水:「誕生日なのになんだよー!」って言ってゲボ吐いて。

丸山:朝起きたら顔中、絆創膏だらけになってた。「なにこれ?!超切れてるじゃん」って。

架空の3ピースバンド「NEWORDER」

スタイリストの丸山晃、俳優の駿河太郎、ファッションデザイナー清水護の3人から成る架空の3ピースバンドをイメージしたファッションブランド「NEWORDER」
「This is formal , This is in formal」=「フォーマルであってフォーマルではない服。」をコンセプトに、それぞれのフィールドで感じてきた事を、音楽ではなく洋服で表現するブランドである。

—ブランドを立ち上げたきっかけを教えてください。

清水:いつか一緒にブランドやりたいねってずっと言ってて、1年半~2年くらいかけて温めてた。みんな音楽好きで、ジョイ・ディヴィジョンいいよねって話してた時に、「New Orderって名前、ブランド名によくねぇ?」ってなって*。そこから早速ネーム作って、裏地も作って。

*ジョイ・ディヴィジョンは、イギリスのポストパンクを代表するバンドで、ボーカルのイアン・カーティスの死によって解散を余儀なくされたが、残された3人のメンバーはその後、New Orderを結成した

駿河:あの波形の裏地ね。今回(23A/W)のスーツにも使ってる。

ジャケットの裏地には、ジョイ・ディヴィジョンのファーストアルバム『Unknown Pleasures』をイメージした波形のデザインを起用しており、ブランドのシグネチャーとも言える要素となっている。

清水:一応アキラさんがシンセボーカルで、タロちゃん(駿河)がベースで、俺がドラムって設定。最近やっとまとまってきたよな。

丸山:最初は俺、ギターボーカルって言ってたんだけど、誰かに「シンセボーカルっぽい」って言われて、確かになぁって(笑)。

「This is formal, This is in formal」

3人が共通して好きなバンド「New Order」と同じように、3ピースバンドとして漕ぎ出したファッションブランド、「NEWORDER」。そのテーマとして掲げられている、「This is formal, This is in formal」に込められている意味について聞いた。

清水:俺から話していいのかな。アキラさんが、その言葉がいいって言い出したんだけど。フォーマルであってフォーマルでないって意味。その言葉、俺にとっては、立川志の輔の『バールのようなもの』*みたいな響きに聞こえて。

*清水義範の短編小説をもとに立川志の輔が作った新作落語。「バールのようなもの」というのは必ずしもバールとは限らない、という会話が繰り広げられる

清水:「ハワイのような天気」って言ったら、それは実際にはハワイのことではない。「夢のような体験」と言ったら、それは実際に夢ではない。っていう会話があって、でも「あの女は妾のようなもの」って言ったらそれはもう妾だってオチがつくんだけど。
俺はこの「フォーマルのような」は、どちらにも転べる広い意味があるように感じて。俺は、最終的には「妾のような」”ような”を目指してやってる。

「ハワイのような」と同じなら「フォーマルのようなフォーマルではない何か」かもしれない。New Orderのラインナップには、カジュアルなテイストのものもある。しかし、コレクションをやるとなったら、それが「妾のような」と同じように「フォーマルのような」と言うからにはフォーマル、というものでありたい。というのが清水の考える「This is formal, This is in formal 」のなのだという。どちらかに方向性を絞ってしまうのではなく、「ような」という言葉のように、そのどちらも内包するブランドである、というのが「NEWORDER」の面白さだろう。

駿河:選び方によってはフォーマルにもできるし、フォーマルじゃねぇな、とも取れるんだよ、NEWORDERって。ここ二人(清水・丸山)はめちゃくちゃフォーマルなんだけど、俺めちゃくちゃカジュアルだし。

丸山:俺はけっこう楽なんだよね、セットアップ。ジャケットとパンツ決まってるから、合わせるものはTシャツかスウェットかタートルか、だけ考えればいい。朝から上これで下これ合わせて…とかやってらんないからね。でもそれで現場入った時に「いつも綺麗な格好されてますね」とか言ってもらえるし。だからめちゃくちゃ楽なのよ。これが俺のエレガンス理論。

駿河:今はエレガンス理論の話ではないな(笑)。

清水:コレクションやるとなったらフォーマルにせないかんけん。タロちゃん(駿河)が造ってるものも、フォーマルにスタイリングするとかして。

駿河:それができるのが丸山晃なんよ。俺がやってるカジュアルを、フォーマルに落とし込んでくれるのはアキラさんしかおらん。

Mental Construct

清水:なんだかんだ、タロちゃんのデザインした服が一番売れてるよな。接客もうまいし。

駿河:俺の友達がアキラさんのデザイン買って行ったりもするけどな。俺は自分がデザインしたやつのほうが喋りやすいから最初それをプレゼンするけど、「あ、響いてないな」と思うと、角度変えて、2人のデザインしたほう勧めてみる。そうすると、たまにズボーンとハマる時があったりして。今回のプリーツのベストとかもそう。

https://mitsume.tokyo/products/pleated-long-vest

清水:最初は、アキラさんから上がってきたもの見て、バランス悪いかなと思ったけど「これじゃないと嫌だ」っていうから。

駿河:ボーカルがそう言ったら、リズム隊は合わせるしかないもんな(笑)。

清水:でも、やってみた結果よくなってた。今回スタイリング見て買って行ってくれる人が結構いて。数字以上の成果があったな、と思った。前回からその気配はあったけど、今回で道が開いたかんじせん?すごく自信ある。

駿河:俺とアキラさんでいうと、数字なんて見てないのよ。俺はセールスマンっぽいところあるけど、目の前の人に何が合うやろ?っていう感覚でプレゼンしていくだけ。靴下1足でも、パンツ1本でもいいから。でも、もしかしたら、パーカーにベスト合わせたらこの人にバチっとハマるかなぁとか考えて。

清水:あれ、おしゃれやったな〜

丸山:ほんとだよね、今回タロちゃんの作ったスウェットのセットアップに俺のベスト合わせたらカッコよかったよね。

駿河:くそカッコよかった!俺も普段この格好するわ!って。

清水:だから結局、俺ら3人のバランスが合うのに3年くらいかかりましたって感じ。

― それぞれの個性が合わさって一つのブランドになっているんですね。

駿河:それが今回のグラフィックでうまく表現できてるなって思った。スウェットの背中に入ってる3人のシルエットが重なってるデザインは、まさに言いたいことがまとまってる。Mental Constructって書いてあるやつ。重なってるとこもあるけど、それぞれがそれぞれでやってるっていうあのグラフィックが、超NEWORDERってかんじ。

https://mitsume.tokyo/products/crewneck-sweat

心理学におけるMental Constructsとは、人間が経験や情報を処理する際に形成される抽象的な概念・認識のことで、個人が行動を決定するための基盤となるものだ。デザイナー3人の顔が知恵の輪状に重なった図案の頭部から頭部へと矢印が向かっているデザインは、影響しあう3人を表しているのだという。

清水:お互いが知らんうちに意識しあって、切磋琢磨されとるっていうか。タロちゃんの接客見て、俺も接客せなって思うようになった。俺ひとりやったら、興味なさそうな客は接客せんかったけど、タロちゃんといると、そういう気になんの。そういうところでもお互いのMental Constractが影響し合ってる。
あれをアルバムのジャケにしようや(笑)。

駿河:めっちゃいい!

こうして三軒茶屋の夜は更けていき、3人は行きつけの店で、出会いや関係性といった更にディープな話を繰り広げることになる。

>>”>後編はこちら>>>

5/15-6/14までの期間限定で、23A/Wアイテムのオンライン注文が可能
Mitsume Tokyo
https://mitsume.tokyo/collections/new-order
丸山着用
Crewneck sweat (White) /Collarless tailored jacket / Flare slacks
駿河着用
Ribknit turtleneck(Red) / Nylon 2way vest (Black) / Fleece basketball pants (Black)
清水着用
Lowguage knit / Ribknit turtleneck(Blue) / Quilting pants(Black)

丸山晃 スタイリスト
専門学校を卒業後、馬場圭介氏に指示。2007年に独立し、雑誌、CM、アーティストのスタイリングや、ブランドのビジュアルディレクションなど幅広く手がける。
Instagram @akr__maruyama

駿河太郎 俳優
2003年、シンガーソングライター「taro」としてメジャーデビュー。その後、バンド「sleepydog」を結成し、ボーカル&ギターを担当。ミュージシャンとして売れない時代を経て、2008年俳優に転向。以降、映画やテレビドラマなどに多数出演しつつ、楽しんで低空飛行を続けている
Instagram @tarosleepydog

清水護  ファッションデザイナー/プロデューサー
ギャラリーセレクトショップMItsuME TOKYOのオーナーであり、手がけるブランドは「anglasad」「NEWORDER」「SAMURAI CORE」「トトノイ」。
そのほか地域創生プロジェクトとして立ち上げた「THE BEYOND AND PRODUCTS 」では、自身が愛してやまないテレビドラマの不朽の名作である「北の国から」と初のアパレルコラボレーションアイテムを発表し「北の国から ’23冬」と銘打ち、2023年7月から発売が始まる。
Instagram @a.g.s.mamoru

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ZEROMILE 編集部

知的好奇心旺盛なミレニアル世代に日本の情報を発信。 「好奇心が心理的距離をゼロにする」をテーマに、編集部がピックアップした情報を掲載。

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