昭和初期、台東区入谷に建築された銭湯をリノベーションしたカフェ「レボン快哉湯」。銭湯×カフェという異色な組み合わせ、非日常的ながらなぜかほっとする空間で自家焙煎のコーヒーを。

東京都台東区、入谷駅を出て昭和通りから住宅街に少し入ると、瓦屋根と白い壁が重厚なコントラストを醸しだす立派な建物がとつぜん現れる。ここは、レボン快哉湯(rébon Kaisaiyu)、銭湯をリノベーションしたカフェだ。

昭和初期、1928年に建築された快哉湯は、地元の人々に惜しまれながら2016年に営業を終えた。建物や設備の老朽化が主な理由だが、「人々の記憶が詰まったこの建物を未来に残したい」というオーナーの想いから、リノベーションプロジェクトが始まった。2020年、銭湯の要素をふんだんに残したユニークなカフェ、レボン快哉湯がオープン。「レボン」は「Reborn」=再生が由来だという。
戸口をくぐってまず目に入るのが、ザ・銭湯の下駄箱。店内は靴を脱いで利用する。下駄箱をアレンジした傘立てもユニーク。


女湯の引き戸から中に入ると、脱衣所がカフェスペースになっている。店内には、2〜3人がけのテーブルが7つ。元々男湯と女湯を区切っていたであろう壁が、そのまま中央にどしんと残っているが、両面が鏡になっており圧迫感はない。高い天井から吊るされた正方形のラインライトがエッジを効かせ、モダンな雰囲気を加えている。


店内はイベントスペースとしても貸し出している。
スタッフがフードを仕込む音、コーヒーの香りが漂ってもなお「あ、銭湯だ」と脳が直感するのは、中央の壁掛け時計、あえて残された番台の高椅子、そしてガラス戸の向こうに銭湯富士が見えるからだろう。


男女双方の脱衣所から見える場所にかかっている時計は、4時48分を指し示している。止まった針に、100年近い年月の重みを感じる。番台の席には、誰でも登って座ることができる。記念写真を撮る客も多いそう。

店の奥、浴室は、建築会社の事務所(株式会社ヤマムラ サテライトオフィス)になっている。ミーティング中などでなければ、自由に出入りや見学が可能。デスクと、富士山の大きな壁画が不思議と馴染んでいる。壁画は所々ハゲてはいるが、青と緑が鮮やかだ。


かつての湯船はレコードや資料などの備品置き場になっている。こう見ると意外と小さい。流し場は給湯スペースに。
カフェの人気商品は「マリアージュプレート」。自家焙煎のコーヒーと、店で作る自家製ジェラートのマリアージュを楽しむ一品だ。それぞれのフレーバーに合わせて、おすすめの産地のコーヒーがセットになっている。
今回はスーププレート(3種のきのこチャウダー)を注文。ドリンク、デザートとセットにして、食後に人気のマリアージュプレートとして出してもらった。

スーププレートは税込1350円〜。ドリンク、デザートのセットで税込1750円
きのこチャウダーは具材たっぷり。まろやかで優しさがありつつ、しっかり塩味で締まっている。ベーコンの油がうまみをプラスしてくれて、ほっとおいしい。
マリアージュプレートは、5種類のセットがある中で「ミルク&エチオピア」をチョイス。女性スタッフいわく一番人気だという。「やっぱり銭湯だからですかね? ほら、牛乳のイメージがあるじゃないですか」。確かに。

湯呑みのようなマグに、思わず左手を添えてコーヒーをひと口。渋みが少なく軽やかな味わい、かといって酸味は強すぎない。ここ数年流行り続けている浅煎りのコーヒーがあまり好みではない私にはちょうどいい。
ミルクジェラートは、口に入れた瞬間「うま!」とすぐ2口目を迎えに行ってしまった。ざらつきが残る舌触りからホームメイド感が伝わる。香り高いエチオピアのコーヒーと合わせて食べると、コーヒーの苦味をさらって一緒にスーッと消えていき、後にほんのり優しい甘さが残る。コーヒーとジェラートを交互に、または同時に、最後にはジェラートにコーヒーにかけて食べるのがおすすめだ。

踏み台を登ると番台さんの特等席。存在感のある体重計も銭湯らしさを残している。
レボン快哉湯には、海外からの観光客も多く訪れる。日によっては、ほぼすべてのお客さんが外国人、なんてこともあるという。海外に、日本の銭湯好きが集まるコミュニティがあったり、日本のリノベカフェなどについて情報を発信する層がいるらしい。「そういうSNSなどを見て、入谷まで来てくれるみたいです」と女性スタッフが説明した。
土日は行列ができることもしばしばあるそう。ジェラートは自家製で数に限りがあるため、特に夏場には品切れになる可能性もあるためご注意を。私が訪問した平日の朝は比較的客入りがゆったりとしていたので、狙い目は平日の午前中だ。

レボン快哉湯(rébon Kaisaiyu)
住所:東京都台東区下谷2-17-11
営業時間:10:00〜18:00
定休日:不定休
Instagram:@rebon_kaisaiyu