重松象平とOMA NYが手がける「ミス ディオール展覧会 ある女性の物語」圧巻の展示空間をレビュー

新ミス ディオール パルファンの誕生を記念して六本木ミュージアムにて開催された「ミス ディオール展覧会 ある女性の物語」。今回はその圧巻の展示内容をレビューしたいと思う。

Courtesy Dior

本展覧会では、ディオールが受け継ぐ卓越したクチュール作品やオブジェ、アーカイブ コレクションが一堂に会する展示と共に、国際的に活躍するアーティスト達とのコラボレーションによって特別に創り出されたアート作品を鑑賞できる。

空間演出を手掛けたのは、2023年に東京都現代美術館で開催された「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ 展」と同じく、建築家・重松象平と彼が率いるOMA NY。昨年の展示を見た人は、それを聞いただけで期待値が膨らむのではないだろうか。ミス ディオールの魅力は我々が語らずとも既にご存知の方も多いと思うので、ZEROMILEでは空間演出にフォーカスを当ててレビューしたいと思う。

妹にささげた香水 Miss Dior

「ミス ディオール」は、メゾン初の香水として1947年に発表された。クリスチャン・ディオールが、自然と花を愛し、レジスタンス運動家でもあった妹カトリーヌに捧げた香水だ。
六本木ミュージアムの敷地に足を踏み入れると、展示のために設置された花壇に咲き誇る花々に迎えられる。フラワーガーデンの中を歩くように、花々の間の小道を進んでエントランスへ向かえば、入場するころにはすっかりミス ディオールの世界に入り込んでいる。

会場は、コンセプトの異なる7つの空間で構成されており、それぞれの部屋がミス ディオールの異なる側面を表している。一足中へ入ると、一面ピンクの世界が広がる。

1:旅のはじまり Miss Dior: Stories of a Miss

Courtesy Dior

ミス ディオールのロゴから伸びるリボンに誘われるように視線を移動させると、さまざまな形にくり抜かれた壁面に、同じ形のオブジェクトが展示されている。これから始まる旅をミニチュアで見せる目次のような部屋となっており、ミス ディオールの香水ボトルやドレス、イメージビジュアルが並ぶ。壁の反対側には、ガラスの向こうに巨大な香水ボトルがゆっくり回転しているのが見える。物質的なサイズを超えたMiss Diorの世界に入り込むための印象的なプロローグだ。

2:刺繍に彩られた特別なボトル Miss Dior by Eva Jospin

次の部屋は、フランス人 ビジュアル アーティスト、エヴァ・ジョスパンが手がけたミス ディオール パルファン限定エディションのための部屋だ。

Courtesy Dior

ローマのVilla Giuliaなどの建築にインスピレーションを得たクラシックなドーム型の部屋で、驚くべきことに、壁の柄だと思っていた模様は花柄の刺繍が施されたタペストリーだった。

部屋の中央にひとつだけ置かれたショーケースには、ジョスパンがデザインした複雑な刺繍が施されたミニトランクとリボンがついた限定盤のミス ディオールが飾られている。歴史ある美術館で貴重な作品を鑑賞しているような、どこか厳かな気持ちで鑑賞してしまう。50年、100後には本当にこの限定品が歴史的な作品になっている可能性も十分にあるので、あながちそのアティチュードは間違いではないかもしれない。

3:香りとイメージを楽しむ Fields of Flowers

Courtesy Dior

次の部屋は、打って変わってロマンチックでイノセントな空間だ。たっぷりとしたドレープに囲まれ、中央に佇むのは1949年にデザインされた「Miss Dior」という名のオートクチュールドレス。そしてそれを取り囲むようにして、蕾を象った5つのアトマイザーが設置されている。足元にあるボタンを押すと蕾の中から香が発生するようになっており、最新のミス ディオール パルファムの5つの香りを楽しめる。

花びらのようなカーテンと香りが、巨大な花に入り込んだミツバチのような気分を体験させてくれる部屋だ。

4:ミスディオールの歴史 Stories of a Miss

Courtesy Dior

ミス ディオールの香水瓶を飾るシグネチャーリボンからインスピレーションを得た空間で、部屋の中央をネオンピンクのリボンがくるくると解けて流れていくようなデザインだ。ショーケースには博物館のように歴史的なアーカイブが展示されている。そして部屋の入り口では、井田幸昌氏が描いたクリスチャン・ディオールの肖像画が訪問者を出迎える。

言葉では伝わりにくいと思うが構造を説明すると、部屋の横幅いっぱいに作られたショーケースの中央がトンネル状に抜かれており、同様のショーケースが等間隔で並んでいる。各ショーケースのトンネルの側面と側面を繋ぐようにピンクのリボンがデザインされている。

歴史的な資料を展示する空間というと、透明なケースの並ぶ部屋をイメージするが、この空間はそういった説明的なものではなく、あくまで「ミス ディオールの歴史をタイムトラベルする体験」に価値が置かれているように感じた。

小さなトルソーに再現された過去のクチュールドレスとパフュームがコラージュのように組み合わされ、一つのイメージを提示している。また、香水ボトルのデザインも時代ごとに変わってきたのがわかるよう展示されている。 Courtesy Dior

5:プレタポルテの誕生 Miss Dior: The Birth of Ready-to-Wear

Courtesy Dior

タイムトンネルの先に待っているのは、エネルギッシュな色のあふれる空間だ。ここには1967 年に発売されたハウス オブ ディオール初のプレタポルテライン「ミス ディオール」のコレクションが展示されている。当時のロゴが幾何学的に組み合わされたブロックで構成されており、オレンジとピンクのチアフルな色合いが、色彩に溢れたコレクションを一層引き立てる。レトロなのにどこか新しく、柄物のセットアップなどは最新のコレクションと言われても納得してしまいそうなほどだ。

6:ディオールを描く Dior Illustrated

Courtesy Dior

美術館のように絵画が等間隔で並ぶこの空間には、ハウス オブ ディオールの初代イラストレーター、ルネ・グリュオーと、現在のイラストレーターであるマッツ・グスタフソンの作品が向かい合わせに展示されている。等身大の版画で再現されており、細部を間近で見ることができる貴重な機会だ。

天井から床に垂れ下がる巨大なカーテンのように波打つ壁面は、グリュオーとクリスチャン ディオールの両スタジオからインスピレーションを得たデザイン。この形状と質感を実現するため、ベルベットのようなコーティングを施したグラスファイバーで造られている。

7:貴重なドレスとアート作品 The Miss Dior Dream

Courtesy Dior

7つめの部屋は、主要なミス ディオール クチュールのドレスが展示されている。それぞれのドレスは、和紙貼りの展示台の小高くなった部分に展示されており、その周辺にはマッチするアート作品と、特別にデザインされた香水ボトルが配置されている。白い和紙の丘と雲が光を優しく反射・透過させ、幻想的な風景を作り出している。

Courtesy Dior

ドレス:マリア・グラツィア・キウリ作
絵画:Rainbow / 江上越
香水:2013年ミス ディオール限定エディション

展示以外のコンテンツも充実

7つ目の部屋を抜けると、過去のキャンペーン映像が見れる映像視聴室のような部屋がある。特に興味深いのは昔の映像で、女性が巨大なリボンをなびかせながら螺旋階段を駆け降りる映像は、3つ目の部屋「Stories of a Miss」のインスピレーションにもなったそうだ。

展示が終わっても、ミュージアムショップならぬ「ミュージアムブティック」でミス ディオールの香水やメイクアップ、スキンケアプロダクトが購入できるし、カフェスペースでは来場者限定の「ミス ディオールカフェ」でスペシャルドリンクやデザートを楽しみながら余韻に浸ることもできる。

コスメやドレスに興味のないかたも、デザインや建築に興味があるならばぜひ足を運んで欲しい。インスピレーションを刺激する発見がたくさんあるはずだ。

「ミス ディオール展覧会 ある女性の物語」
場所:六本木ミュージアム
開催期間 :2024年6月16日(日) - 2024年7月15日(月・祝)
休館: 6月25日(火)
時間:10:00-20:00(最終入場19:00)7月15日のみ18:00 CLOSE(最終入場 17:00)
入場 :完全予約制(無料)
予約URL :http://on.dior.com/24md
*本イベントのご予約、ご入場、会場内での製品ご購入には、ご自身のスマートフォンからディオールビューティー公式LINEアカウントへのお友達追加とLINEコネクトが必要になります。

バーチャル ミュージアム ブティック
オープン期間 :2024年6月17日(月) - 7月15日(月・祝)まで
対応機種 :スマートフォンやPCからGoogle Chrome / Safariのブラウザをご利用ください

注意事項
※ご入場・ご予約 はお一人様一回とさせていただきます。
※会期・開場時間等が変更となる場合がございます。詳細は公式特設サイトをご覧ください。
※会場でのお支払いは各種クレジットカード、電子マネー、QR決済をご利用いただけます。現金でのお支払いはできませんので、予めご了承ください。

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Orie Ishikawa

ZEROMILE編集担当。 歴史、文学、動物、お酒、カルチャー、ファッションとあれこれ興味を持ち、実用性のない知識を身につけることに人生の大半を費やしている。いつか知床にシャチを見に行きたい。

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