The Cream of the Crop Coffee | コーヒーの街・清澄白河を作った始まりの店

近年、アートとコーヒーの街として認知されてきている清澄白河。数年前から、世界的に有名なロースタリーが次々にオープンしているこの土地に、2012 年、最初にオープンしたのが、The Cream of the Crop Coffee (ザ クリーム オブ クロップ コーヒー) だ。

カフェではなく焙煎工場

大横川沿いにある、子犬のロゴが目印のロースタリー。倉庫の面影を残すインダストリアルな外観ながらも、壁面に描かれたチョークアートのようなイラストが親しみやすい雰囲気を醸し出している。


中に入ると、吹き抜けの天井まで届かんばかりの巨大な焙煎機に圧倒される。選び抜かれた最高のコーヒー豆を、まさにこのロースターで焙煎しているため、周囲には甘く芳ばしい香が漂っている。カフェというよりは、焙煎工場の一角でコーヒーを楽しめるような造りになっており、ロースターの音や豆の香りを感じながら過ごす時間は、よりコーヒーの味わいを深めてくれる。

一杯ずつ丁寧にハンドドリップされるコーヒーは、新鮮な豆の旨味と甘味を感じられるまろやかな口当たり。カフェオレでもミルクに負けない力強さ、香り高さを感じられる。 使用するカップにもこだわり、天然素材のものを使っている。 コーヒーは地球からの恵みだからこそ、環境に配慮した選択をしているのだという。

なぜ清澄白河だったのか

清澄白河には運河が多く、江戸時代には貨物船が行き交っていた。近代化するにつれ物流は変化し、今では運河が使われることもなくなったが、いまだにこの地には倉庫や工場、その跡地が多く残っている。

The Cream of the Crop Coffee のオーナー、田島雄志氏は、使われなくなった倉庫の空き物件に目をつけた。なにせ本格ロースターを導入するからには、天井の高い物件が必要だったのだ。川沿いの今の場所は、ロースターの煙も運河側に排出することができ、近隣への影響も少ない。そこでこの倉庫をリノベーションし、今の店舗ができあがった。近くには東京都現代美術館や個人のギャラリーもあり、芸術を楽しむ人々が訪れる地でもある。コ ーヒーを片手に川沿いを歩き、ギャラリーからギャラリーへと足 を伸ばすのにも最適だ。

しばらくすると、世界的に有名なロースタリーも後を追うように続々とこの地に焙煎工場をオープンし、今では清澄白河は、アートとコーヒーの街として知られるようになった。

世界の最上級を日本に

実は、オーナーの田島雄志は、日本のインポートビジネスの第一人者で、80 年代から「セルジオ・ロッシ」や「ジョン・ロブ」、 「ピエール マルコリーニ」などのブランドを日本に広めてきた人物だ。

田島雄志

社名である THE CREAM OF THE CROP AND COMPANY というのは、「極上のものと仲間たち」という意味で、世界中から見つけてきた最上級のものを、みんなで日本に広めたいという信念からつけられているそう。The Cream of the Crop Coffee で提供されるコーヒーは、そんな彼が選び抜いた極上の豆を、自家焙煎によって最高の状態で味わうことができる。

先見の明を持っているかのように見える田島氏だが、彼によると、ビジネスとして成功しそうかどうかではなく、自分が好きだと思えることが重要なのだという。その中で、ピカッと光る何かを感じたものを選び、どうしたらそれを他の人にも好きになってもらえるかを考えることが、結果として成功に繋がってきたのだそうだ。

物に宿る愛情や思い入れは目に見えなくても、その商品の魅力となって人の心に届くのかもしれない。

昨年秋からは、新たな試みとして「セーブ ジ オランウータン」をテーマにした、ヒトと地球のためのスキンケアブランド「U1R」をリリース。第一弾として、オランウータンの住むアブラヤシの森を守るため、パーム油を使わずに作られた石鹸が発売された。このロースターで焙煎したコーヒー豆を配合したフレーバーも人気だ。
オンラインショップのほか、毎週末にロースター内でポップアップショップも展開されている。

週末になると、アート好きの若者が集い、平日には、近所の主婦が外のテーブルでおしゃべりを楽しむコミュニケーションハブに なっている。 取材の最中にも、近所の常連客が、頼んでおいたコーヒー豆を取りに来て、スタッフと楽しそうに会話を交わし帰っていった。
のんびりとした下町の雰囲気を味わうならば、平日か午前中がおすすめだ。

清澄白河に来るならば、この町のコーヒーカルチャーの原点であるこの場所は必ず訪れたい。

The Cream of the Crop Coffee 清澄白河ロースター

〒135-0021 東京都江東区白河4丁目5番4号
TEL: 03-5809-8523
OPEN: 10:00~18:00
月曜日定休
ウェブサイト:https://c-c-coffee.com

SHARE

Orie Ishikawa

ZEROMILE編集担当。 歴史、文学、動物、お酒、カルチャー、ファッションとあれこれ興味を持ち、実用性のない知識を身につけることに人生の大半を費やしている。いつか知床にシャチを見に行きたい。

RELATED