マドモアゼル・ユリアの 【語るキモノ】 Vol.11 赤坂氷川神社

DJとしてファッションシーンで活躍しながら、着物のプロデュースも手掛けるなど多彩な顔を持つマドモアゼル・ユリアさん。アートや建築にも精通したユリアさんが、お気に入りのスポットを訪ね、その場面と響き合う着物のコーディネートを語る連載。2026年を迎えた最初の回は、江戸時代からの石段や社殿が残る「赤坂氷川神社」へ。吉祥の願いを込めた着物姿とともにお届けする。

1000年以上の時を重ねる都心の聖域へ

年初めに訪れたのは赤坂や六本木の繁華街から少し離れた「赤坂氷川神社」。数ある神社のなかでも、今年の年初めにユリアさんがこの社を参詣したいと思った理由は、初めて見たお祭りのインパクトにあったとか。「毎年9月に執り行われる例祭や神幸祭(しんこうさい)を見た際、東京の真ん中でこんなお祭りがあったのかと驚きました!16 基もの神輿をはじめ、大きな山車が赤坂の街を巡る情景は圧巻。さらに、芸妓さんが練り歩くというのも歴史ある花街だからこそ。本当に感激したお祭りでした」と語りながら、ユリアさんの感動が蘇るよう。

御祭神として祀られているのは、素盞嗚尊(スサノオノミコト)と奇稲田姫命(クシナダヒメ)の夫婦神ということから、東京三大縁結び神社として知られている。また、男女のご縁だけでなく友人、仕事、子宝に至るまで、あらゆる「結び」の神である大己貴命(オオナムチノミコト)も祀られており、商売繁盛や厄除けのご利益も。仕事でもプライベートでも、“人とのご縁”を大切にしているユリアさん。2025年の12月に、ユリアさんにとって初めての著書『きもののとりこ』(世界文化社刊)を上梓したことで、新たに生まれたご縁の重なりに感謝しながら、まずは社殿を参拝。

赤坂氷川神社の創始は、1000年以上もの歳月を遡った951年。東国を遊行していた蓮林僧正が、一ツ木村(現在の赤坂4丁目付近)で一夜を明かすと、夢の中で御祭神のお告げがあり、その地に氷川明神の社殿を建て祀ったことが起源となる。それから約100年後、1066年に関東一円に大干魃(だいかんばつ)が発生した際には、苦しむ村人たちが社に雨乞いを祈願、するとたちまち雨が降りはじめたとか。以来、霊験あらたかな神社としてよく神事が執り行われるようになった。

さらに、1730年には8代将軍吉宗公が社殿を建立。14代家茂公まで歴代将軍の朱印状が下付されるなど、将軍家との縁の深い神社として今もその姿を残す。1976年に東京都の有形文化財(建造物)に指定された社殿は、建築当時の質素倹約の気風を表していながら、大きな雲形組物や吹寄せ垂木など、微細な意匠に江戸の雅味が込められている。内部の壁には、1929年に宮部衆芳によって「鳳凰図」が描かれ、こちらは東京都の重要文化財に指定。格天井の豪奢な花鳥図とともに、荘厳な社殿の内に華やぎを秘めている。

若松色の江戸小紋に“午(うま)”の帯で初詣

新春にふさわしい装いとしてユリアさんが選んだ着物は江戸小紋。質素倹約を奨励した徳川吉宗の時代に武士階級の間に広まった小紋で、遠目には無地に見えるほど微細な型染めが施された、江戸っ子のお洒落心が宿る一枚だ。ユリアさんの江戸小紋は、清雅な若松色にペイズリー柄をほどこしたオリエンタルな意匠。合わせた帯は、2026年の干支である“午年”にちなみ、躍動的な馬を織り出した袋帯だ。

「午年に締めたいと思って何年も前から温めていた一本です。馬の体には、幸せが永遠に続くことを願った青海波とはじめ、吉祥紋様である菊、そして“吉”の文字まで織り出されています。ご一緒する方にも招福を運ぶ気持ちで選びました」(ユリアさん)。帯留めはお正月らしく獅子舞のデザイン、簪には縁起を運ぶ七宝繋ぎを選ぶなど、装いの細部にまでさりげなく物語を込めている。2026年はどんな“キモノ語り”を綴るのか、今から心待ちにしたい。

MADEMOISELLE YULIA
(マドモアゼル・ユリア)

10 代から DJ 兼シンガーとして活動を開始。DJ のほか、着物のスタイリングや着物 教室の主催、コラム執筆など、東京を拠点に世界各地で幅広く活躍中。2023年には友人と着物ライフをお洒落に彩るブランド【KOTOWA】を立ち上げる。YOUTUBE チャンネル「ゆりあの部屋」は毎週配信。
OFFICIAL SITE :https://yulia.tokyo
Instagram : @MADEMOISELLE_YULIA

◾️今回訪れた場所はこちら
赤坂氷川神社
住所:東京都港区赤坂6-10-12
電話:03-3583-1935
Webサイト:https://www.akasakahikawa.or.jp/

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Takako Kabasawa

クリエイティブディレクター。女性誌や書籍の執筆・編集を中心に、企業のコンセプトワークやブランディングも行う。着物や茶の湯をはじめとする日本文化や、地方の手仕事カルチャーに精通。2023年に、ファッションと同じ感覚で着物のお洒落を楽しむブランド【KOTOWA】を、友人3人で立ち上げる。https://www.k-regalo.info/

Photo by Natsuko Okada

広告制作会社・出版社の写真部門を経て、(株)Studio Mug を設立。和の文化・ファッションを中心に、マガジン、広告問わず活動中。ライフスタイルから派生するジャンルの撮影を得意とする。2019年より写真専門学校で未来のフォトグラファー育成の講師を担当

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