日本をイメージする代表的な“色”を美しい写真と共に紹介する連載企画。
第2弾は世界的にもブームである、「抹茶」にスポットを当てて紹介していきたい。
抹茶色と言われ想像される色になるまでに、どのような工程を経てあの美しいグリーンが生み出されるのか。今回は京都宇治の山政小山園監修のもと、色の変化に注目しながら抹茶ができるまでの製造工程を紹介していく。
抹茶の製造工程における色の変化
1.覆下園(おおいしたえん)で育む
抹茶の原料葉である碾茶づくりは新芽から始まる。十分な肥料を施し、毎年4月頃一斉に芽吹くと、太陽光の下で鮮やかな緑色の輝きを放つ。そこから新芽に覆いをかぶせて日光を遮断する。覆下園と呼ばれる特殊な茶園は、旨み成分を葉に留め、覆い香と呼ばれる抹茶独特の香りを生みだしていく。覆いをすると光合成を望む葉が薄く広く成長し、葉緑素を活発につくるため、葉の色はより緑の濃さを増していく。
2.茶摘み
3から4週間ほど十分に覆いをかけ、葉が大きくなりすぎる前に摘採。新芽だけを丁寧に摘んでいく手摘みと、機械によって刈る方法があり、手摘みの碾茶は味も良く高級品となる。
3. 緑茶独特の工程 ”蒸し”
摘んだ新芽をできるだけ新鮮なうちに蒸し、酸化酵素の作用を止める。蒸すことによって色味はさらに緑の濃さを増していく。蒸さずに酸化させると紅茶や烏龍茶となるのだ。
4. レンガ製碾茶炉で火入れ(乾燥)する
蒸した葉を揉まずに乾かす。揉みながら乾燥させると玉露となる。乾燥が終わってできた茶を碾茶の荒茶という。
5. 揃え、選る
葉の大きさを揃え、茎と葉脈を取り除く。選り分けた碾茶を再び乾燥させ、わずかに混ざっている古葉(新芽でない葉)もここで取り除く。
6.茶の審査
拝見場と呼ばれる審査室で経験豊かで鋭敏な感覚の専門家が審査。審査で等級がつけられた碾茶はそれぞれの持ち味を生かし、味と香りのバランスの良い茶にブレンド(合組)。
7.保管・熟成させる
冷蔵庫などの低温除湿の状態で仕立碾茶のまま保存すると、うまく熟成しふくよかな香りとまろやかな味がいっそう高まる。需要に応じて石臼で抹茶に挽き上げるまで保存。
8. 碾茶を石臼で挽く
あらゆる製造現場で機械化が進む現代においても、碾茶を挽くのに石臼に勝るものはない。しかし、石臼を自動化する際には繊細な調整が必要となる。この調整技術によって、なめらかでとろけるような舌ざわりの抹茶が生まれる。また、葉を細かくすることで、明度が10倍になり、美しい抹茶色へと変化を遂げる。
■全行程における色の変化
抹茶の美しい色は長い時間と手間をかけて作られているのだ。安価な抹茶はもともとの緑の色に赤身がある二番茶や、色が浅い葉脈部分も機械で粉砕していくため冴えた緑色ではなくなってしまう。ある程度の品質は色とも相関がある。次に抹茶を飲むときには、まず目で色味を堪能してから楽しんでもらいたい。