都心の表参道で、日本のものづくりの現場を目撃! 
「リッツウェル」表参道ショップ&アトリエ

日本の名だたるラグジュアリーホテルに採用されるほか、感度の高い人々のインテリアに続々と迎え入れられているリッツウェルの“メイド・イン・ジャパン”の家具。その製作現場を、表参道で間近に見ることができる。

Photo by Nacása & Partners

「リッツウェル」は、世界を見据えたメイド・イン・ジャパンのグローバルブランドとして、1992年福岡で創業した家具メーカー。創業以来、ドイツiFデザイン賞、RED DOT賞、シカゴグッドデザイン賞など、数々の世界的に権威のあるデザイン賞を受賞し、国内外のラグジュアリーホテルから感度の高い人々のレジデンスまで、数多くの納入実績をもつ。2023年には、ブルガリホテル東京やザ・リッツカールトン福岡のインテリアにも採用されている。

その「リッツウェル」の家具づくりを間近に見ることができるのが、東京メトロ表参道駅から徒歩約6分、複合施設「ののあおやま」1階にある「リッツウェル 表参道 ショップ&アトリエ」だ。ショップ内に設けられたアトリエでは、定期的に職人の製作風景が披露されている。2月は2月4日(日)〜12日(土)と、2月18(土)〜24(日)の2週間(水曜日は定休)。ショップ入り口の正面にあるアトリエは、さながらレストランのオープンキッチン。製作に集中する職人の姿が、実にかっこよく見える。

すべてオリジナルのリッツウェルの家具が展示されたショップ内にアトリエが併設されている。

ここで行われるおもな製作は、椅子の張地である革やファブリックのカッティングや縫製、そして椅子への張り込みだ。特筆すべきは、それらが単なるデモンストレーションではなく、実際に販売される家具の製作だということ。職人の製作風景が公開される工房やアトリエは東京都内にもあるが、どちらかといえば郊外に位置するところがほとんど。ここは、都心の表参道で職人の本気の手仕事が見られる、貴重な場所なのだ。

ふらりと立ち寄って、長い時間見学する人も多いという。

職人たちは、見学者の質問にも気軽に答えくれる。なかには購入を決めた人が、自分の家に納入される家具の製作を見に来ることもあるという。約10名が所属する職人のひとりである長尾玲麻(ながお・れお)さんに、話を聞いた。長尾さんは、厚革と呼ばれる革素材をメインに手掛けている。

職人の長尾玲麻氏

まずは製作の様子を見せてもらった。椅子の背もたれの微妙なカーブに合わせて仮留めされた革は、最初はゆがみやシワが目立つが、長尾さんが手で状態を確認し、少しずつ革をなじませながら引っ張り、ビス留めしていくと、ふっくらしたクッションを包み込むように、次第に表面がスムーズになっていく。

手の感覚で、平面の革を立体的に仕上げていく。

「立体的なカーブに平面の革を張ることは、もともとつじつまが合わないことです革に切り込みを入れながら、全体のバランスを見つつ、背もたれの曲線に革をなじませるように張っていきます」

長尾さんをはじめとする職人たちは、ふだんは福岡県糸島にある「糸島シーサイドファクトリー」で製作している。糸島といえば、移住先として全国的に名前が広がりつつある、人気の地域だ。

2019年に竣工した糸島シーサイドファクトリー

「それまでは福岡市内にあるオフィスの片隅で試作や製作をしていたので、このファクトリーができたときは本当に驚きました。何しろ目の前が海で、本当に気持ちのいい環境です。防風林があるので1階からは海は見えませんが、いちばん見晴らしのよい場所にある休憩室からは、海が見渡せます」

糸島ファクトリーの休憩室からの眺め

「糸島シーサイドファクトリー」で働く約20名の職人のうち、4〜5人の職人が交代しながら、1〜2ヶ月に1度の頻度で、表参道のアトリエに赴き、1週間滞在する。

「表参道のアトリエに通う1週間のうち、水曜日は定休日なので、新木場や浅草橋に行って道具や材料を見たり、美術館や博物館に出かけたりしています。ふだんは環境のよい糸島で、たまに都心で、大好きなものづくりができる。こんなにいい仕事はないと思っています」

充実したライフスタイルから生み出されるメイド・イン・ジャパンの家具は着実に注目を集め、2008年から出展を始めた世界一の家具の国際見本市、ミラノ・サローネでの注目度も高まっているという。昨年は職人が展示会場でデモンストレーションを行ったところ、世界各国のプレスがこぞってその様子をSNSにアップした。

長尾氏がアトリエ制作していたチェア「マルセル」

「とくに珍しい技術を使っているわけではないのですが、アート作品のような一点ものでない量産型のアイテムに対して、手間を惜しまず細部までこだわり丁寧に作っている点に関心が集まったようです」

その製品はもちろん、ショップ、アトリエからファクトリー、職人のユニフォームに至るまで、独自の世界観が貫かれている「リッツウェル」の家具づくり。その現場を見に出かけよう。

リッツウェル 表参道 ショップ&アトリエ
住所:東京都港区北青山3-4-3 ののあおやま1F
営業時間:11:00〜19:00
定休日:水曜日
電話番号:03-3423-2929
ウェブサイト:https://ritzwell.com/
アトリエ・職人稼働日:2月18(土)〜24(日)
*水曜定休
*3月以降も不定期で開催されるので、SNSでチェックを!

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Naoko Ando

(株)世界文化社、(株)日経BP社にて男性誌、婦人誌、ライフスタイル誌の編集に携わり、2010年フリーランスの編集者/ライターとして独立。おもにアート、旅、インテリア、デザイン、建築の分野で活動中。近著に『マティスを旅する』(世界文化社)がある。noteにてコラム「旅とアート」を公開中(https://note.com/esperluca)。

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