樹齢2000年、日本最古と言われる「神代桜」。生と死、桜と空が溶け合う

日本三大桜のひとつ、山梨県にある山高神代桜(やまたかじんだいざくら)を拝みに実相寺を訪れた。

空気が少し春めきだってきた頃、「日本三大桜」なるものがあると、恥ずかしながら私は初めて知った。福島県田村郡の三春滝桜(みはるたきざくら)、岐阜県本巣市の根尾谷淡墨桜(ねおだにうすずみざくら)、そして山梨県北杜市の山高神代桜(やまたかじんだいざくら)。

天然記念物として選ばれた桜の木々から、とくに巨大で古い点が「三大」に数えられる理由だそうで、中でも神代桜は日本最古の桜と考えられている。推定樹齢は2000年……!

2000年生きている桜を、デジタルの画面越しではなくこの目で見てみたい。わざわざ桜を愛でに、平日にほかの仕事を投げ打ってまで東京から遠出するなんて、私も着実に歳を重ねているんだな……と思いながら、山梨県に足を運んだ。

アクセスは車がおすすめ

神代桜は、日蓮宗実相寺の境内にある。ノープランで出かけた私は、JR中央本線日野春駅からどうにもこうにも動けず(マップ検索すると駅から寺まで4.6キロメートルと表示されるが、山道で到底歩けそうにない)、居合わせたご夫婦が呼んだタクシーに相乗りさせてもらった。

車なら中央道須玉ICを降りて約15分。桜の季節は混雑でタクシーにもなかなか乗れないそうなので、車で行くことをおすすめする。

その日は、3月末にしては異例の寒さだった。雨も降ったり止んだり。神代桜がほぼ満開と聞きつけ急いで家を出たが、タイミングをミスったかも……。そう運転手さんに漏らすと「むしろ完璧なタイミングですよ。咲いた後に寒いと、花が落ちない。実相寺の桜は少し早く咲くので、周囲の桜が咲き乱れている時より際立って素敵です」と教えてくれた。

確かに、山の上に一角だけ、淡く光る部分があった。桜の頭が見え、思わず車内の3人で「うわあ〜」と口をそろえる。

参拝客を出迎えるしだれ桜も圧巻

実相寺に到着。門の先に、しだれ桜の枝が見える。実相寺には神代桜だけでなく、名木の子桜も複数植えられている。この「身延山しだれ桜の子桜」の見事さたるや。柵から桜がこぼれ落ちそう。

尚早ではなかった。曇ってはいるけれど、真っ白な空に溶け込んで、境界線が曖昧になっている桜の花もそれはそれで美しい。こっくりと黒い枝幹とのコントラストもかっこいい。

いざ、樹齢2000年の桜

境内の奥、本堂の向かって左側に、神代桜は枝を広げている。高さ約10メートル、枝張りは周囲約12メートル。2000年もの月日を過ごしてきた太い幹はぐにゃりと下に歪曲しているものの、そこから上へ上へと花が咲いており、ダイナミックさに息をのむ。

エドヒガン種の古木である神代桜は、その昔ヤマトタケルノミコトが手植えしたと伝えられている。この生命エネルギーは、古事記の英雄の手から受け継がれているのか……。

実相寺の公式サイトによると大正11年、神代桜は天然記念物に指定された。当時は、高さ13.6メートル、枝張り東西27メートル・南北30.6メートル、幹回りは10.6メートルもあったという。度重なる自然災害や、環境変化により樹木が衰え小さくなってしまったが、やぐらを立てて支えたり、土を入れ替えたりして、住職や保存会が守り続けてきた。

花はほぼ満開、淡い薄紅色が上品だ。けれど、目が行くのは2000年の移り変わりをたたえた幹だった。根本は、南北に引き裂かれるように大きく割れている。所々に苔をまとい、ゴツゴツとした最下部はかつての至大さを感じせる。

大小さまざまな支えが木を取り囲んでいる。景観を損なうどころか、その1本1本が神代桜が悠々と過ごしてきた時の長さを物語っている。

実相寺いわく、神代桜は「『生』と『死』の両方を感じさせてくれる」。花は散るけれど、この幹はおよそ20世紀もの間、ここで呼吸を続けているのだ。そう思うと、今なお毎年見事に花を咲かせていること自体が奇跡かもしれない。

私が訪れた3月末は、境内のほかの桜はまだもの寂しい様子だった。4月第1週の今、実相寺全体や周辺の木々は見頃のピークを迎えている。満開を過ぎても、しばらくは花が舞い散る景色を楽しめるはず。そのあとはいよいよ、神代桜にとって2000何回目の新緑の季節がやってくる。

桜のシーズン、実相寺の周辺には出店が並ぶ。花より団子?

山高神代桜 (日蓮宗 大津山 実相寺)
住所:山梨県北杜市武川町山高2763
拝観時間:8:30〜17:00(最終受付16:30、御朱印受付も同時刻まで)
拝観料(春季限定):一般500円、北杜市民300円、中学生以下無料
定休日:なし
Webサイト:https://www.jindaizakura.com/
Instagram:@jissouji_jindaizakura

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Rikako Takahashi

東京都出身。Webメディアを中心にエディター、ライター、翻訳家として活動中。ZEROMILEではライターとフォトグラファーを兼任。海外ニュース&エンタメ、カルチャー記事など広く担当。旅と猫と流れる水と夜を愛する。@rikako.takahashi

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