
2015年12月に福岡市中央区平尾で創業した「NO COFFEE(ノーコーヒー)」。エスプレッソ系ドリンクの提供にとどまらず、タンブラーやアパレルなど幅広いオリジナルグッズを展開し、独自のポジションを築いてきた同店が、天神中央公園内のハレノガーデンに新店舗「NO COFFEE TENJIN PARK」をオープンした。
なぜ今、都心の公園という新たなフィールドを選んだのか。そして、なぜNO COFFEEは大手コンビニからストリートブランドまでを巻き込む唯一無二の存在へと成長したのか。オーナーである佐藤慎介氏に話を伺った。
閑静な平尾から、開かれた公園の“キオスク”へ

福岡市中央区平尾。東京でいえば幡ヶ谷や富ヶ谷を彷彿とさせる、感度の高い人々が集まる住宅街の一角に、NO COFFEEの1号店はある。オープン以降、取り扱うアイテム数や商品バリエーションが年々増加し、ブランドの世界観をより広く表現できる新たなスペースが求められていた。
そうした中、天神中央公園の管理・運営を行う西日本鉄道からの声かけがきっかけとなり、天神〜中洲エリアを結ぶ同公園内の施設「ハレノガーデン」への出店が決定した。水辺と緑に囲まれた開かれたロケーションは、街を回遊する人々が日常的に立ち寄りやすいのが特徴だ。
天神パーク店のデザインコンセプトは「公園のキオスク」。建物中央にアイランド型のバーカウンターを配置し、公園内の売店を思わせるショップ・イン・ショップの構造を採用した。内装は、平尾店のアイコンであったモルタルグレーとは趣を変え、ブランドカラーである黒を基調としたタイルに白い目地ラインをあしらい、特注の什器で構成。ベンチには公園の街灯を模した照明を設置し、公園の自然に合わせてグリーンをアクセントカラーとして取り入れている。

那珂川を一望できるテラス席
客席は店内約20席、川沿いのテラス約20席の計40席を備え、平尾店と比べてゆったりと過ごせる環境が整えられている。客席数が大幅に増えたことに伴い、平尾店では提供していないフードメニューも拡充された。定番のワッフルや焼き菓子に加え、トーストメニューや限定コラボレーションによるアサイーボウルなど、腰を落ち着けて楽しめるラインナップが揃う。
また、店内のテーマカラーであるグリーンを落とし込んだマグカップやアパレルなどの限定グッズも展開。これらはオンラインストアでの販売は行わず、店頭限定商品として取り扱われている。
味だけじゃないコーヒー”ブランド”屋


アパレル、ペット用品、キャンプギア、インテリアフレグランス、さらには大手コンビニエンスストアとのコラボレーションまで、NO COFFEEのグッズ展開とコラボレーションの幅広さは、一般的なコーヒースタンドの領域を超えている。その根底にあるのは、オーナー・佐藤さんのユニークな経歴だ。
大学時代、まだ渋谷に1店舗(Bunkamura)しかなかったスターバックスの日本初期に約4年間アルバイトを経験し、コーヒーカルチャーの基礎を体験した。しかし大学卒業後は飲食ではなく玩具メーカー、そしてアパレル企業へと進み、10年以上にわたって企画やPRの現場に関わってきたという。

30代後半で独立を決意した時、自身の好きなものであるコーヒーと、長年培ってきた得意分野であるものづくりやPRを掛け合わせた結果が、NO COFFEEという形だった。佐藤さんは、コーヒーは嗜好品であり、世界大会で評価された豆であっても万人の口に合うとは限らないと考えている。味覚に絶対的な正解が存在しない以上、味だけで勝負するという発想は最初から持ち合わせていなかったという。

定番のブラックラテは、黒ゴマではなく竹炭を使用している
もちろん提供するもののクオリティに妥協はない。国内外のゲストがこぞって注文するのが、漆黒のビジュアルが際立つ看板商品「ブラックラテ(BLACK LATTE)」だ。エスプレッソに竹炭(チャコールパウダー)とミルクを合わせたこの一杯は、もともとは期間限定商品として開発されたが、国内外の来客から継続的な要望が寄せられたことで定番メニューへと定着した。モノトーンの店舗空間とも調和するビジュアルが特徴で、抹茶ラテにエスプレッソを加えたメニューや、アメリカーノと並んで主力の一杯となっている。
カルチャーと異業種をつなぐコラボレーション

「NO」からとった「エヌオくん」という名のオリジナルキャラクター
また、NO COFFEEを語るうえで欠かせないのが、多種多様なコラボレーションである。年間約20本近くに及ぶオファーの約8割は、相手方からのアプローチによるものだという。ストリートを代表するブランド「X-girl」や、裏原宿カルチャーを牽引した藤原ヒロシ、清永浩文との関係者限定Tシャツなど、たくさんのカルチャーアイコンと肩を並べてきた。
コラボレーションにおいて佐藤さんが一貫して重視しているのは、お互いにとってWin-Winであるかどうかという点だ。異業種だからこそ生まれる意外性や面白さがあり、大手企業から声がかかるのも、これまで地道にカルチャーとものづくりの文脈を積み重ねてきた結果だと捉えている。


マスに向けた大きな仕掛けと、コアなカルチャー層に刺さる企画。その両方のバランスを取りながら、ブランドの認知とファンの母数を広げていく。既存のファンに嫌われないことだけに固執していては成長が止まってしまうため、常に新しい客層へどう届けるかに注力しているという。
静謐な住宅街でカルチャーを育んできた平尾店。 そして、水と緑に囲まれた都心の公園で、街の日常と世界を結ぶ天神パーク店。NOCOFFEE(コーヒーではない)という逆説的な看板を掲げながら、誰よりもコーヒーの周りにあるカルチャーを拡張し続ける同店は、今日も訪れる人々に新しい刺激と心地よい時間を提供している。
NO COFFEE TENJIN PARK
福岡県福岡市中央区西中州6-36ハレノガーデンEAST
Webサイト:https://www.nocoffee.jp/