2022年から大規模改修工事のため約4年間休館していた江戸東京博物館が、2026年3月31日にリニューアルオープンを迎えた。

東京都江戸東京博物館は、江戸・東京の歴史と文化を振り返り、未来の都市と生活を考える場として1993年3月に開館。実際の建物の復元模型や、精巧なミニチュア模型、実際の歴史的資料などを組み合わせた展示方法は、来場者の想像力を掻き立て、充実した体験を提供してきた。この度のリニューアルでは、老朽化した施設の補修や利便性の向上のみならず、展示自体にもさらに没入感を高める工夫が施されている。
空間演出の刷新 時間を遡るアプローチ
西側アプローチ(JR両国駅側)には、新しく「鳥居」をモチーフにしたゲート型のオブジェが設置された。内側のスクリーンには歩く人々と風景のアニメーションが投影され、入り口へ進むにつれて現代→明治時代→江戸時代と徐々に時間を遡っていく仕掛けだ。

(写真提供:東京都江戸東京博物館)
また、展示だけでなく、空間デザインとしても和の文化と技術が随所に取り入れられた。館内1階エントランスの壁面には、左官職人・久住有生氏の手仕事による作品が据えられ、展示室に入る前から現代まで生きる職人技に触れることができる。


1Fエントランス(写真提供:東京都江戸東京博物館)
1枚目:正面の壁は久住有生氏による作品
2枚目:チケットうりば
視覚と感覚で没入を高める展示手法
6階の常設展示室の壁には、天井付近に巨大スクリーンを増設。江戸と現代の空をイメージした映像を投影。大型模型を実際の景観の一部として捉えられるようになった。また、橋の先に設けられた「のれん」をモチーフにした仕切りが、街並みという「外」の世界と、生活の場である「内」の世界とを感覚的に切り替える役割を果たしている。


江戸時代の人々の暮らしぶりを学べる「江戸ゾーン」では、建物の中に実際に入り、スケール感を体感できる演出が増えていた。
芝居小屋「中村座」の入り口部分を原寸大で復元した模型は、側面から入れるようになっており、天井の低さや入り口の造りを内側からより詳しく観察できるようになっている。



(写真提供:東京都江戸東京博物館)
また、庶民の日常にかかせない長屋も、以前は眺めるだけだった「大工の部屋」が、実際に中に入れる仕様に変更された。これにより、当時の人々の暮らしのリアルなスケール感を体感できるようになった。



玄関部分と居間の2畳分を切り取り、中に入れるように。しゃがんで部屋を見渡すとよりリアルに長屋の生活を想像できる。
(1枚目写真提供:東京都江戸東京博物館)
新たに増設された大型模型の数々
明治以降の文化を伝える「東京ゾーン」には、新たに3つの大型模型が追加された。まず一つ目は、橋の上からも存在感を放っていた「服部時計店」。以前は「朝野新聞社」の模型だったものを、史実に基づき「服部時計店」へと改修。服部時計店は、現在のセイコーグループの源流ともいえる企業であり、建物自体はその後、銀座・和光へと形態を変えたが、時計塔の存在は現在にいたるまで銀座のシンボルであり続けている。


建物内には明治期の銀座の街並みが再現された精巧なミニチュアの模型が展示されている。屋根の瓦は一枚ずつ手貼りで作られている。
他にも、明治期の東京の賑わいを表す大型模型「浅草花屋敷の門」も追加された。さまざまな写真や資料を基に明治30年代頃の状態を再現したものだ。当時は動物園としての役割も果たしていたようで、看板にはトラやライオン、ゾウなどの動物が描かれており、門をくぐると檻に入ったトラが出迎えてくれる。


1枚目:門を入って右側の檻にトラの模型がある
2枚目:1890年(明治23)に竣工の「凌雲閣(浅草十二階)」の模型も健在。当時は日本一高い建物であり、日本初の電動エレベーターが搭載された。(写真提供:東京都江戸東京博物館)
時代は下り、大正時代の資料が並ぶエリアを過ぎたあたりに新しく設置されていたのが「同潤会代官山アパートメント」の復元模型だ。同潤会アパートとは、関東大震災の復興のため、財団法人同潤会が各地に建設した鉄筋コンクリート造りの集合住宅のこと。電気・都市ガス・水道・水洗式便所など、当時最先端の設備を完備していた。

模型には実際の同潤会アパートメントの取り壊し時に出た部材を使用している。(写真提供:東京都江戸東京博物館)
このほか、既存の大型模型もところどころ展示の動線が見直され、より細部まで観察できるようアップデートされている。付帯施設であるレストランやカフェ、ミュージアムショップも大幅にリニューアルされているのでぜひ立ち寄ってみてほしい。
リニューアルオープンを記念した特別展も
江戸ゾーンでは、リニューアルオープン当日である3月31日から4月26日までの期間限定で、歌川広重「名所江戸百景」の展示が行われている。広重が最晩年に手がけた集大成として知られる「名所江戸百景」全点がずらりと並ぶ空間は、これだけでも数時間見てしまいそうなほどの見応えがある。


展示方法もユニークで、本のような額縁の端にあるQRコードを読み込むと、描かれた場所の現在の画像をみることができる。
4月25日〜5月24日までは、『江戸東京博物館リニューアル記念特別展 大江戸礼賛』と題された特別展が開催される予定。選りすぐりの逸品や初出品資料を軸に、都市「大江戸」の魅力に迫る内容となっている。
アップデートされ、見応えもパワーアップした江戸東京博物館。特別展や常設展をじっくり味わいたいなら、丸一日過ごす覚悟で挑もう。


江戸の町のミニチュア模型は眺めているだけでも楽しい
東京都江戸東京博物館
住所:〒130-0015 東京都墨田区横網1-4-1
Webサイト:https://www.edo-tokyo-museum.or.jp/