DJとしてファッションシーンで活躍しながら、着物のプロデュースも手掛けるなど多彩な顔を持つマドモアゼル・ユリアさん。アートや建築にも精通したユリアさんが、お気に入りのスポットを訪ね、その場面と響き合う着物のコーディネートを語る連載。第8回は、ユリアさんが海外の方へレコメンドしたいという根津神社。格調高い建築美や境内の幻想的な鳥居に映える、新年の着物スタイルとともにお届けする。
根津神社の西に位置する乙女稲荷。朱塗りの千本鳥居の美しさに魅了される。
絢爛に満ちた文化財の神社へ
江戸時代創建の楼門に、「すごい存在感ですね」と圧倒されるユリアさん。
初詣のスポットは数多あれど、今回ユリアさんが訪れたのは東京十社の1つにも数えられる根津神社。その歴史は、遡ることなんと1900年余。日本書紀や古事記に登場する日本武尊(ヤマトタケル)が創祀したと伝えられる古社である。現在、神社が建つ土地は3代将軍徳川家光の三男である綱重の山手屋敷だった場所。1706年(宝永3年)に5代将軍徳川綱吉が土地を神社へ献納し社殿を奉建、権現造りの本殿をはじめ、幣殿・拝殿・唐門・西門・透塀・楼門が欠けずに現存し、7箇所の建造物が国の重要文化財に指定されている。
境内南側の表参道口の鳥居にて。ユリアさんが纏うコートは、友人と立ち上げたブランド「KOTOWA」の新作。
国の重要文化財に指定されている楼門。
境内南側の鳥居をくぐり神橋を渡ると、威風堂々とした朱色の楼門(ロウモン)が現れる。江戸時代に造られた楼門が現存するのは、都内では根津神社だけということで歴史遺産としても注目される。門の左右には「随身」と呼ばれる貴族の警護に伴った官人の像が置かれ、向かって右側の像は「水戸黄門」で知られる徳川光圀がモデルだといわれる。
楼門を抜けると、いよいよ2つ目の門へ。両妻に唐破風(からはふ)をしつらえたことからその名がつけられた「唐門」へと辿り着く。「楼門も唐門も朱塗りに所々金色の装飾が施してあり豪華絢爛。さすがは徳川家が建てた神社、とても風格がありますね」とユリアさん。
楼門を抜け社殿へと向かう。
唐門から足を踏み入れると、江戸の神社建築としては最大の規模を誇る、総漆塗りの権現造建築の拝殿が佇む。権現造とは日本における建築様式のひとつで、本殿と拝殿が一体化されているのが大きな特徴だ。こちらもまた、5代将軍綱吉が神社の大造営を行った際に建てられたもの。根津神社の拝殿は、その保存状態においても都内随一といわれている。また、拝殿は「透塀(すきべい)」と呼ばれる長さは200mの塀で囲われており、こちらも国の重要文化財に指定されている。
透塀越しに眺める拝殿は、ひときわ奥ゆかしい風情を放つ。(3,4枚目の写真提供:根津神社)
参拝を終えたユリアさんは境内にある乙女稲荷へ。整然と立ち並ぶ千本鳥居に圧倒されながら、「まるで時代をタイムスリップしたかのような光景ですね。現代の東京にこうした景色がある、そのコントラストが面白いですね」と語る。
根津神社の拝殿よりも、小高い位置に建つ乙女稲荷。
お正月をイメージした艶やかな黒地のきもの
袖が長めに誂えられた着物が、立ち姿までも優雅に演出。
由緒正しい徳川家に所縁のある神社を訪れるために、ユリアさんが選んだ一枚は、アンティークの2尺袖の長羽織を着物に仕立て直したもの。紙風船がリズミカルに舞う、はんなりと愛らしい着物に合わせた帯は、縁起物尽くしの染め帯。いずれもお正月をイメージしたという。「黒、赤、白という日本の伝統的な晴れ着の色彩ですべてをまとめました」(ユリアさん)。有田焼の帯留めや芸妓モチーフのバッグ、鈴付きのリボンをアレンジしたヘアスタイルに至るまで、新年を迎えた喜びに彩られている。
黒、赤、白を基調としたコーディネートが遠目にも冴えわたる
ディテールにもお正月らしい物語を込めて。
千本鳥居をくぐる後ろ姿からも、お正月らしい佇まいが立ち込めるよう。
MADEMOISELLE YULIA
(マドモアゼル・ユリア)
10 代から DJ 兼シンガーとして活動を開始。DJ のほか、着物のスタイリングや着物 教室の主催、コラム執筆など、東京を拠点に世界各地で幅広く活躍中。2023年には友人と着物ライフをお洒落に彩るブランド【KOTOWA】を立ち上げる。YOUTUBE チャンネル「ゆりあの部屋」は毎週配信。
OFFICIAL SITE :https://yulia.tokyo
Instagram : @MADEMOISELLE_YULIA
◾️今回訪れた場所はこちら
根津神社
住所:東京都文京区根津1-28-9
電話:03-3822-0753
公式URL:https://nedujinja.or.jp/