小原晩【たましいリラックス】vol.32 雪がふることつもること

雪の降った日、ともだちと家でのんでいて、朝がきた。このまま寝てしまうと夕方まで寝てしまうので選挙に行けなくなると思い、あと二時間ほどねむらずに、このまま起きていてもいいかと聞くと、いいよ、というので、起きていた。

酒をのみのみ、時間はたって、へろへろの足どりで家をでると、雪がつもっていた。お互い東京の端っこ生まれであるので、つもった雪にうれしくなって、いらない足あとをたくさんつけた。素手で雪をつかみ、塩むすびをつくるみたいにかためて、相手にむかって思いきり投げる。撥水加工されている上着が雪をはじいて、わらう。いつものまちが白いだけのこと以上のきもち。

公園を入ったところにある公民会みたいなところに入っていく。ともだちには公園で待っていてもらう。さらさら投票をおわらせて、雪のなかにいるともだちを探す。いる。遠くからみても、わらっているのがわかる。わらいながら、こちらに雪をぽーんと投げてくる。手前で落ちる。雪はまだまだうれしいままで、帰るほうへ歩きだす。

おなかとかすいていないけど朝ごはんとか食べようよ、と横断歩道をわたり、階段を上がって、人の少ない早朝のファミリーレストランに入る。窓側のテーブルにすわって、雪をみながら食べる、和風ハンバーグ定食。ともだちはサンドイッチ。

食後のコーヒーを飲みながら、白い街を見ていると、あっちのほうから恋人同士が雪をふみしめ歩いてくる。まだうすく降っている雪に目をほそめながら、やはりどこかうれしそうなふたりである。あのふたりがこのままファミレスにやってくるという設定で、ともだちとアテレコしはじめる。たのしいだけのじかん。アテレコにもすぐ飽きて、二杯目のコーヒーを飲むか、帰るか、考えているうち、ファミリーレストランのドアがひらいて、あのふたりが入ってきた。

ほんとうにきた! と丸い目を合わせる。
つしゅう、みたいな声だして、わらう。
とんでもない奇跡がおきた、みたいにふたりして感じているのは、酔ってるからかな、雪のつもっているからかな、おなかいっぱいだからかな。なんでかな。



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小原晩

1996年東京生まれ。作家。歌人。2022年3月エッセイ集『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』、2023年9月『これが生活なのかしらん』(大和書房)刊行。https://obaraban.studio.site

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