由布岳の森羅万象に抱かれひと皿の真価を味わうオーベルジュ ENOWA YUFUIN

美味しさも、メニューのアイディアも全ての答えは“畑”が教えてくれるという。

世界中の気鋭のシェフは食材を探し求め、または自らの料理の理想を求め、時としてその地に住み着くことさえある。ニューヨークの星付きレストラン「Blue Hill at Stone Barns」でスーシェフとしてキャリアを築いたタシ・ジャムツォ氏も、そんな一人といえる。

地球の生命力を宿した食材から究極のひと皿を奏でるタシ氏の思いを形にするために、ここ『ENOWA YUFUIN』はホテルが幕開ける約3年も前から農地を開墾。京都で10代続く石割農園の指導のもと、土づくりにはじまり野菜づくりに挑み、2023年にオープンを迎えた。

由布岳をのぞむ「ENOWA FARM」。ゲストが食べるものとできる限り近い距離で触れ合えることを願い、農園ツアーも行う。

“野菜の匠”とも、“オーダーメイドの野菜の魔術師”とも謳われる石割照久氏と手がけた野菜は、大地から届いた美しい贈り物といえる。

ホテルのルーツともいえる「ENOWA FARM」では、季節ごとに野菜やハーブ、果物を約30品目200種類以上育てている。レストランでは決まったメニューは据えず、毎朝シェフ自らがファームに出向き、その日の最高の食材を見極めて一期一会のひと皿を生み出す。時にシンプルに、時に大胆に、素材の命を誰よりも熟知したタシ氏にとって大切なことは、食材が語りかけるエナジーだという。

1枚目:ホテルのメインダイニング「JIMGU」で究極のテロワールを饗するエグゼクティブ・シェフのタシ・ジャムツォ氏。
2枚目:近年は近隣の鶏舎と契約して、卵も日々収穫。

「食材がどこで、どのように育ったのかを知ることは、料理人にとってとても大切です。食べ頃の野菜や果物を自分の手で選び取り、収穫したばかりの新鮮な食材を、その日の夕食に使う。それは何にも代えがたい贅沢であり、至高の喜びです。丹精込めて育てられた食材だからこそ、体にとって最も純粋な栄養となり、真の豊かさをもたらしてくれます」(タシ氏)。

そんな言葉を聞くほどに、大地の奏でる“その日、その瞬間のひと皿”を連泊で味わい尽くしてみたくなる。

研ぎ澄まされた料理と呼応するモダンな設えのメインダイニング「JIMGU」。

野菜への愛情に満ちた、彩り鮮やかなひと皿。

料理もさることながら、『ENOWA YUFUIN』は“くつろぎ”と“洗練”が絶妙に響き合うハイセンスな空間も魅力だ。客室は全19室、由布岳を望む山の斜面にヴィラ棟10室、ホテル棟9室が点在する。全客室に据えた露天風呂は、源泉100%掛け流し、全ての部屋のインテリアが異なるため何度でも訪れたくなる。さらに、ホテル内には「ENOWA FARM」を体感できる「インドアガーデン」を、敷地内には「ハーブガーデン」「ヒーリングガーデン」「ワーキングガーデン」と趣向を変えたガーデンがあり、自分にフィットする場で五感を解き放つことができる。

1枚目:山の傾斜を利用してゲストのプライバシーにも配慮。
2枚目:インドアガーデンでは、栽培している野菜を肴にアペリティフを愉しむことができる。

「初めて訪れた時、美しい自然と由布院の人々の温かさに本当に惹かれました。海外からのお客様には、幽玄な自然の気と温泉のパワーをたっぷりと感じながら、繊細な野菜を味わい、五感を満たしていただきたいです」

そう語るタシ氏は、幾度も由布岳に登り、一瞬一瞬の表情と大地のエネルギーを感じ、ここにしかない地球の神秘に寄り添っているという。上質な“湯食同源”がここに。

露天風呂とインフィニティプールを備えた「ヒルトップスカイパビリオンA」。

写真提供:全てENOWA YUFUIN

ENOWA YUFUIN
住所:大分県由布市湯布院町川上544
電話: 0977-28-8310
https://enowa-yufuin.jp/

SHARE

Takako Kabasawa

クリエイティブディレクター。女性誌や書籍の執筆・編集を中心に、企業のコンセプトワークやブランディングも行う。着物や茶の湯をはじめとする日本文化や、地方の手仕事カルチャーに精通。2023年に、ファッションと同じ感覚で着物のお洒落を楽しむブランド【KOTOWA】を、友人3人で立ち上げる。https://www.k-regalo.info/

RELATED