2025年6月5日、中目黒駅高架下HVEN(ヘイヴン)の入り口に、目にも美しいフルーツチーズケーキバーのテイクアウト専門店「Bonchi Stand」がオープンした。

宝石のような完熟フルーツ
四季折々に旬を迎えるフルーツを使い、常時8~10種類ほどラインナップされる。メニュー開発には、自由が丘で25年にわたりイタリアンの名店として愛されてきた「Babbo Angelo」のオーナーシェフ コッツォリーノ・アンジェロ氏を起用。完熟生フルーツの魅力を引き出すレアチーズケーキとなっている。
チーズケーキ生地には、レモンやオレンジなどの柑橘系のピールが混ぜ込まれており、爽やかな香りが鼻に抜ける。あっさりとしており、繊細な風味の果物と合わせても邪魔にならない。
面白いのは、合わせるフルーツによってチーズケーキそのものの味わいも違って感じることだ。たとえば、キウイやいちごなどの酸味のあるフルーツと合わせた時には、フルーツヨーグルトのようなすっきりとした味わいに。いちじくや焼きリンゴと合わせた時には、濃厚なコクを感じるリッチな味わいに感じる。




キウイレアチーズバー(税込580円)
いちじくレアチーズバー(税込1180円)
ブラッドオレンジレアチーズバー(税込680円)
イチゴレアチーズバー(税込880円)
パッケージも、食べ歩きのできる1本入りから、ホームパーティの差し入れにも使いやすい4本入りなど様々な商品ラインナップを用意する。


2本入 4本入
たくさんの人においしさを伝えたい
運営会社は、果物専門で産地直送の小売卸売事業を展開するスタートアップ企業、株式会社Bonchi。レストランへの卸売りのほか、自社運営のECサイトでは、収穫したての果物や自社ブランドのジュースを販売する。
この度オープンした直営のチーズケーキスタンドBonchi Standは、「果物のおいしさを、より多くの人に食べて知ってもらいたい」という思いから、中目黒という若い世代や外国人に人気の場所に出店。商品の味や美しさだけでなく、パッケージやロゴなどのビジュアルコミュニケーションにも力を入れている。

2019年、21歳という若さでBonchiを立ち上げた代表取締役の樋泉 侑弥(ひいずみ ゆうや)氏は、Apple Japan合同会社のリテール部門出身だ。同社での経験が、ブランディングとストーリーづくりの大切さを教えてくれたという。収穫から口に入るまでの体験をデザインすることで、Bonchiのブランド力を強化する意図もあるそうだ。

株式会社Bonchi 代表取締役 樋泉侑弥氏
おいしいものは、生産者がいなければ食べられない
実は、彼らBonchiの事業領域は流通や小売だけではない。日本の農業界全体の課題でもある後継者問題の解決のために、ベテラン生産者と若い就農希望者を結びつけ、持続可能な農業エコシステムの構築を目指した「Farm the FARMER project」を行なっている。

Farm the FARMER : https://bonchifarm.com/program
「日本の農家は、70%が65歳以上の高齢者なんです。20代の農家の割合はわずか1%です。このままでは、長い年月をかけて高めてきた伝統技術や土地や木も失われてしまう。東京の高級店で食べるパフェやケーキも、材料がなければ作れない。おいしいものは、生産者がいなければ食べられないんです。」
日本有数の果物の産地・山梨県で生まれ育った樋泉氏の目からは、SNSできらびやかに消費されていく高級フルーツの裏側に、果樹園で働く年老いた農家の人々が見えていた。
日本の農家は基本的に、農家の子どもが家業を継ぐというルートがほとんどだ。しかし農家に生まれた子供が必ずしも農家になりたいとは限らない。彼らが農業以外の職を選択する自由はある一方で、新規参入のハードルは、とてつもなく高い。樋泉氏は、「農業をしたい若者が農家になれる時代」をつくることが日本の農業問題を解決する糸口になると考えた。
「Farm the FARMER.project.」では、Bonchi提携農家での研修制度や、Bonchiが所有する農地や機器のリースなどの手厚いサポートが約束される。また、晴れて一人前になった暁には、Bonchi提携農家となり、収穫した作物の仕分け・梱包・販路開拓までをBonchiに任せることができる。
そしてBonchiの果物の売り上げの10%が、この「Farm the FARMER.project.」の基金として積み立てられ、問題が起きた時の支援や、新規就農者の受入経費として使われる、という循環が生まれる仕組みとなっている。ちなみに金額はリアルタイムでwebサイト上に発表されている。
「このようなやり方は、僕が全く別業界にいたから思いついたのかもしれません。我々は果物の業界から始めましたが、このような動きが他の産業でも生まれていくといいですよね。」
樋泉氏の話を聞いていると、自分も何かしなくちゃ、という気持ちになる。Bonchi Standで働くスタッフたちも、なんだかみんな楽しそうで、目が輝いていた。自分が心から善と思える仕事をしていると、こんな風に気持ちのいい人たちになるのかもしれない。
「買い物は投票だ」という言葉がある。消費者が商品やサービスを購入することで、その企業を応援することになる。こういった企業が市場で最も評価される社会になれば、我々はディストピアな未来を回避することができるのではないだろうか。
そしてこれは私がまさに今、大好物のスモモをポチろうとしている理由だ。
写真提供:株式会社Bonchi
Bonchi Stand
〒153-0051 東京都目黒区上目黒1-6-10 中目黒高架下HVEN
Webサイト:https://bonchifarm.com/cafe
Instagram:@bonchi_official