2018年、日本国内ではおよそ100年ぶりに新種として登録された桜をご存じだろうか？
「クマノザクラ」がそれだ。
まだ地元でしか知られていないレア度マックスな桜で、一足早いお花見を楽しんでみてはいかがだろうか？
紀伊半島南部に咲く野生の桜
クマノザクラは、三重県、和歌山県、奈良県の三県にまたがる地域の山間部で生息している野生品種の桜だ。これまでこの地域で自生していた桜は西日本に広く咲くヤマザクラの変異と思われてきた。しかし、森林総合研究所多摩森林科学園の勝木俊雄博士らによって、この桜が未報告の新種であることを確認。「世紀の発見」となった。
熊野市紀和町の小川口スポーツ公園にあるクマノザクラ
クマノザクラの見ごろは？
クマノザクラはソメイヨシノよりも開花が早く、例年は3月中旬ごろに見ごろを迎えるが、生えている場所やその年の気候により2週間ほど前後することもあるようだ。
ソメイヨシノなどの栽培種に比べて花は小さくつつましいが、１つの花芽につき2つの花がつくのがクマノザクラの特徴だ。淡い桜色の可憐な花が熊野の険しい山の中にぽっと咲いている様子は、桜色の霞がかかったようで、山間部に春の訪れを告げてくれる。
クマノザクラの開花時期には他の桜は咲いていないので、タイミングが合えばきっと見つけられるはず。
熊野市紀和町最大のクマノザクラである「赤木桜」
熊野古道歩きの途中で桜を楽しむ
クマノザクラはその名からわかるように、熊野信仰で知られる紀伊半島南部に自生しており、奇しくも分布エリアの中心には熊野信仰の聖域のひとつ、熊野本宮大社が位置している。いにしえより厚い信仰を集め、多くの参拝者が歩いた祈りの道「熊野古道」は、2004年にユネスコの世界文化遺産に登録されている。
そんな熊野古道を歩きながらクマノザクラも一緒に楽しみたい人におすすめなのが、熊野古道伊勢路の「風伝峠」と「通り峠」の2コース。いずれも「日本の棚田百選」に選ばれる丸山千枚田（熊野市紀和町）の中を通るルートとなっており、1000枚以上の棚田が広がるのどかな田園風景を眺め、苔むした石畳の道を歩くことができる、初心者にもおすすめのコースだ。
かつての旅人も同じ風景や草花を眺めながら歩いたのかと想像すると、現代人の我々にも敬虔な気持ちが自然とわいてくるから不思議なものだ。
1、2枚目：熊野古道 ©️熊野市観光協会
3枚目：丸山千枚田
地元発信のクマノザクラ情報を利用
クマノザクラは野生の花なので見やすい場所が少なく、ましてや群生もしていないので、見に行く際は地元が発信する情報を利用したい。
一般社団法人日本クマノザクラの会が三県の代表的なクマノザクラのスポットを紹介してくれている。
また、熊野市観光協会でもクマノザクラのおすすめスポットを紹介。クマノザクラが数多く生息する熊野市紀和町では「紀和町へクマノザクラを見に行こう！」というウェブサイトを公開し、開花状況も発信している。同町内にある道の駅板屋黒兵衛の里ではクマノザクラマップを配布するほか、クマノザクラにちなんだ食事も提供するなど、精力的にクマノザクラ情報を発信している。
今年の春は、多くの花見客で混雑するおなじみの名所を避けて、幻の桜を見に熊野まで足を運んではいかがだろうか。
日本の原風景とともに、魂まで浄化されるような経験が待っているはず。
問い合わせ
熊野市観光協会
TEL0597-89-0100
HP ：https://www.kumano-kankou.info/
