個展「Tomo Koizumi」開催中 | ファッションとアートの境界線を探索する

2023年12月9日(土)から2024年2月10日(土)まで、天王洲のTERRADA ART COMPLEXⅡ内のギャラリーYUKIKOMIZUTANI にて、Tomo Koizumi自身初となるアート作品の個展、「Tomo Koizumi」が開催中だ。

Tomo Koizumi氏が、自身の名を冠するブランド「TOMO KOIZUMI」を立ち上げたのは、大学在学中の2011年。今やフリルを大胆にあしらったデザインは彼の代名詞ともなった。2020年の東京オリンピック開会式で国歌斉唱した歌手のMISIAが纏っていた白いドレスも記憶に新しい。この他、世界的なミュージシャンであるBjorkやSam Smithなど名だたるアーティスト達からも絶大な支持を集め、数々のコラボレーションを実現してきた。

フリルというと、少女っぽく柔らかいスタイルをイメージするが、TOMO KOIZUMIのフリルはそれとは違う。筆者が初めてみた時は、そのパワフルで凶暴なハッピーさに圧倒され、フリルでぶん殴られたような感覚になった。

今回の展覧会では、「ファッションとアートの境界線」をテーマに、ギャラリー空間をクローゼットに見立て、ギャラリーをフレームとして流動的で可変的な空間に仕立てている。天井から吊るされオブジェのようになった作品や、アンバランスに壁にかけられているもの、わざと捻っているものなど、立体的に存在感を感じられる展示方法となっている。実際に、Tomo Koizumi氏本人がその場で試行錯誤し決めたのだそうだ。

今回展示されているのは、2023年 9 月にパリで発表したプレゼンテーション「Dress as a painting, Painting as a dress.」の作品群で、ドレスとして人が身に纏った状態で見ていたものが、ファッションというカテゴリーから解き放たれ、より自由な解釈を与えてくれるものになっていた。
もし事前知識がないまま展覧会に足を踏み入れていたら、コンテンポラリーアートの作品だと思っただろう。

常に「アートとして扱えるファッションを」という想いを抱いてドレスを作り続けてきたというTomo Koizumi氏。 驚きがありながらもどこか調和のとれた、説明のいらない美しさを含んでいることを信念に制作を続けてきた彼は、ファッションとアートの世界を行き来しながら変幻自在にその表現を拡張する。

そんな彼の作品としてのドレスの美しさ、そして2022年より 続けてきた彼のアート作品制作への想いに心動かされ、ギャラリーのオーナーである水谷有木子氏が直々にオファーし、個展開催に至ったのだそう。
Tomo Koizumi氏は、この展示を通して、ファッションへの価値観の問い直しや、アート業界とファッション業界の架け橋になることができればと語る。

こんな風に壁面に飾って楽しむことができるのであれば、インテリアとして取り入れたいと考える人や、ギャラリーに迎えたいと思う人もいるのではないだろうか。嬉しいことに作品は全て購入可能。作品を好きになったら、年齢・性別・体型や着て行く場所なんか考えなくていい。飾り方を変えたり、時には纏ってみたりして、どこまでも自由に楽しめる。

クリエイションに対して、ジャンルやカテゴリーなんて無意味なんだと思わされた展示だった。入場料無料なので、TOMO KOIZUMIを知らなかった人も、一回フリルにぶん殴られにいってほしい。

Tomo Koizumi
2011年、大学在学中に自身のブランドを立ち上げる。2019年初となるファッションショーをニューヨークで開催。2019年毎日ファッション大賞選考委員特別賞受賞、BoF500選出。2020年LVMHプライズ優勝者の1人に選ばれる。2021年東京オリンピック開会式にて国歌斉唱の衣装を担当。2021年毎日ファッション大賞を受賞。Instagram : @tomo_koizumi

Tomo Koizumi 個展 「Tomo Koizumi」
会場:YUKIKO MIZUTANI TERRADA ART COMPLEXⅡ/1F 
会期:2023年12月9日-2024年2月10日
休館日:日・月・祝 
※2023年12月26日~2024年1月8日 冬季休廊
Webサイト:https://yukikomizutani.com

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Orie Ishikawa

ZEROMILE編集担当。 歴史、文学、動物、お酒、カルチャー、ファッションとあれこれ興味を持ち、実用性のない知識を身につけることに人生の大半を費やしている。なんでもかんでもチンパンジーに例えて考える癖がある。

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