「かんさつ視点 池田学とどうぶつたち」 動物画シリーズ51作品を一挙公開

佐賀県多久市は、同市出身の画家・池田学が、2005年より公益財団法人 東京動物園協会が発行する季刊誌『どうぶつと動物園』に掲載してきた「動物画シリーズ」51作品の一挙公開にあたり、多久市アート企画展「かんさつ視点 池田学とどうぶつたち」を2023年4月22日から開催する。

カワセミ/ Alcedo atthis
多久市所蔵(公財)東京動物園協会『どうぶつと動物園』掲載撮影:宮島径 
ⒸI_K_E_D_A_ _M_a_n_a_b_u_Courtesy of Mizuma Art Gallery

「動物画シリーズ」

動物の写真を元に毛並みや模様、魚であれば鱗など、その動物特有の特徴や質感、表情などを丁寧に”観察”し描き上げた作品群だ。1mmに満たないペンを使い、池田氏ならではの観察力によって細密に表現されており、今にも動き出しそうだ。

ベニイロフラミンゴ / Phoenicopterus ruber
多久市所蔵(公財)東京動物園協会『どうぶつと動物園』掲載撮影:宮島径 
ⒸI_K_E_D_A_ _M_a_n_a_b_u_Courtesy of Mizuma Art Gallery

池田氏が今回の企画展で一番見て欲しい作品は、“キリン”だという。2016年に右手を負傷し、始めて左手を使って作った作品で、震える手を調整させながら、3倍以上の時間をかけて制作した。それでも、利き腕である右手で描いたものに遜色のない仕上がりまで高めることができたことで、より思い入れが強いのだという。

キリン / Giraffa camelopardalis
多久市所蔵(公財)東京動物園協会『どうぶつと動物園』掲載撮影:宮島径 
ⒸI_K_E_D_A_ _M_a_n_a_b_u_Courtesy of Mizuma Art Gallery

この他、“トビハゼ”のようなツルっとしている生き物はペンで表現するのが難しいのだそうで、それを作品として描き切れたことで自分の可能性を広げることができたと語る。

「マディソン日記」

また、本展では、2019年から佐賀新聞で連載中の「マディソン日記」の原画も一部初公開される。
池田氏がアメリカ・ウィスコンシン州マディソンで過ごす中での日常の出来事や、日々感じたこと、思ったことを綴った日記とともに、執筆された原画を初公開。ペンに鉛筆、水彩など細密画だけではなく、水彩画やイラストタッチな作品などもあり、池田氏の様々な技巧に触れることができる。

《運命の出会い》 佐賀新聞 2021年3月2日号掲載
©IKEDA Manabu Courtesy of Mizuma Art Gallery

《リラックスの必要》 佐賀新聞 2019年5月3日号掲載
©IKEDA Manabu Courtesy of Mizuma Art Gallery

現在アメリカ在住の池田氏は、積極的に海外の方とコミュニケーションをとり、情報や考えを吸収するようにしているのだそうだ。
作品の制作スタイルについても、時代や自身の年齢の変化に合わせ、変えるべきところと続けていくべきところを見極めながら新しい作品への挑戦をしていきたいと語った。

池田学「かんさつ」コレクション

池田氏の幼少期から学生時代までの思い出・趣味を紹介するコーナー、池田学「かんさつ」コレクションでは、自然の中での遊びから、当時人気だったゲームや漫画まで、成長とともに興味の対象が変遷していく様子を垣間見ることができるスケッチ作品、アルバムなどに加え、予備校講師時代に教え子たちにあてた直筆の絵手紙などを見ることができる。

池田氏本人は以下のように語っている。
「多久で企画展を開催できるのは、子供の頃の遊び場だった思い出を作品として公開できて、故郷への恩返しができたという気持ちが強く嬉しく思っています。
小中学生の頃、まだインターネットもなく外で遊ぶことがメインだったので、思い入れのある場所がたくさんあります。そこで見て感じた虫や魚、草や木、川などの自然から学んだことは本当に多く、今回のかんさつ視点に通ずるところですが、他の作品の活動にも生かすことができています。故郷で学んだことは大きい。」

なお、一人でも多くの、幅広い年代の方々に作品を観てほしいという池田氏の願いを受け、16日間の会期中、入場料は無料となっている。

ペンで描き出す超絶技巧

池田氏の作品は、丸ペンで描き出される圧倒的な細密さと共に、ユニークな感性と創造力で国内外を問わず高い評価を得ている。
特に、今年の米国アカデミー賞にて7冠を受賞した映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(監督:ダニエルズ)の制作にも大きな影響を与えたことでも話題となっている。

Photography by Munemasa Takahashi

池田 学 (いけだ まなぶ)

1973年佐賀県多久市生まれ。98年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。
卒業制作にて紙に丸ペンを使用した独自の細密技法を確立。2000年同大学院修士課程を修了。
2011年より文化庁芸術家在外研修員としてカナダ、バンクーバーに滞在。
2013年よりアメリカ、ウィスコンシン州マディソンにあるチェゼン美術館の招聘を受け、滞在制作を行う。アメリカ在住。
2014年公益信託タカシマヤ文化基金・第25回(平成26年度)タカシマヤ美術賞受賞。
2017年「池田学展 The Pen—凝縮の宇宙」佐賀県立美術館、金沢21世紀美術館、日本橋髙島屋を巡回。
主な書籍に『池田学画集 1』(羽鳥書店刊)『The Pen』『《誕生》が誕生するまで』(青幻舎刊)がある。
今年6月よりカナダのAudain Art Museumにて海外初個展が予定されている。

多久市アート企画展 動物画シリーズ 51 作品一挙初公開 
「かんさつ視点 池田学とどうぶつたち」

会期: 2023 年 4 月 22 日~ 5 月 7 日11:00 17:00 (最終受付 16:30)
会場 :佐賀県多久市北多久町大字小侍 4644 1 天山多久温泉 TAQUA
入場料:無料
ウェブサイト:https://www.city.taku.lg.jp/soshiki/14/24210.html

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ZEROMILE 編集部

知的好奇心旺盛なミレニアル世代に日本の情報を発信。 「好奇心が心理的距離をゼロにする」をテーマに、編集部がピックアップした情報を掲載。

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