日本が世界に誇るマンガ文化に酔いしれる「京都国際マンガミュージアム」の魅力

京都観光といえば、神社仏閣に代表される歴史的な事物にどうしても目が行く。しかし、京都の魅力はこれにとどまらない。「文化・芸術のまち」を標榜するだけあって、現代的なカルチャーを前面に押し出した見どころも多い。

今回紹介するのはその1つ、「京都国際マンガミュージアム」だ。

元小学校を活用したレトロ感ある施設

「京都国際マンガミュージアム」は、その名のとおりマンガを扱った博物館。京都市と、(日本で唯一、マンガ学部を設置している)京都精華大学の共同事業として2006年にオープンした。京都市の中心街、烏丸御池駅から徒歩数分の所に位置しており、アクセスも良好。

併設する「前田珈琲 マンガミュージアム店」そばのエントランスをくぐると、ミュージアムショップがあり、ここは入館料なしで利用できる。ショップのそばで入館券(大人1人=1200円)を購入したら、マンガの世界へ踏み入れることになる。

内部の空間が、レトロな雰囲気を漂わせているのは、約百年前に建てられた龍池小学校の校舎を利用しているから。小学校は閉校となったが、校長室が遺構として残されており、昔ながらの板張り廊下から中を見学することができる。

校長室とは別に、「京都国際マンガミュージアム」の現役の館長室もある。今の館長は作家の荒俣宏さん。博覧強記として知られるが、マンガにも詳しく、かつては少女マンガ家を目指した時期もあるということでの抜擢となった。常駐はしていないが、ご本人の等身大写真が来館者を出迎えてくれる。

収蔵するマンガ・関連資料は約30万点

校長室など一部のエリアを除けば、1階から3階までマンガにかかわる展示物が盛りだくさんだ。
最初に目に入るのが「マンガ万博」というコーナー。海外の言語に翻訳された日本のマンガや、海外で刊行されたマンガが多数陳列されている。

「マンガ万博」にあるマンガは、全体のごく一部。各フロアに「マンガの壁」と呼ぶ書棚があり、ぎっしりとマンガの単行本が詰まっている。その数、約5万冊。ジャンルは様々だが、1階は少年マンガ、2階は少女マンガ、3階は青年マンガという区分けがなされている。

当館の広報を務める中村浩子さんによれば、「収蔵するマンガや関連資料は約30万点」に及ぶという。公開されていないものについては閲覧手続きが要るが、「マンガの壁」にあるマンガは好きに取り出して読んでもかまわないそうだ。借りて自宅に持ち帰ることはできないが、旧校庭の広場(下写真)に持ち出すのはOK。

歴史的な作品が一堂に会するメインギャラリー

2階の吹き抜けスペースの通路を、巨大な「火の鳥」のオブジェを見ながら進んでいくと、ハイライトとなるメインギャラリーにたどり着く。かつては小学校の講堂であった広々とした空間には、1912年から2005年までの歴史に残る作品が陳列されている。くわえて、マンガに関するパネル展示も設置。マンガの制作技法やマンガ雑誌の変遷など、知識欲を満たしてくれる充実した内容となっている。

マンガ文化を多角的に楽しめる趣向が満載

こうした常設展とは別に、期間限定の企画展やミニ展示も行われている。筆者が訪れたときは、「マンガとボードゲーム展」が開催中であった(~2025年7月1日)。主にマンガのなかに出てくるボードゲームの実物が展示され、パネルで解説されていた。マンガという文化の奥深さをうかがい知る、貴重な機会であった。

読む、見るだけではなく、体験もできるのが、当館の大きな特徴。例えば、各種ワークショップがあり、そこではマンガのキャラクターにペン入れをするなどの楽しみがある(要事前予約・有料)。また、プロが似顔絵を描いてくれる「ニガオエコーナー」もある。中村さんは、「このコーナーは、外国人海外旅行者にも人気が高く、申し込み枠がすぐ埋まります」と話す。当館の入場者数は、年間約30万人だが、今やその約3割が外国人。SNSでの口コミなどで、海外での認知度が高まっているとのこと。

言われてみれば、来館者の比率は思った以上に外国人が多め。国籍も人種も様々で、彼らにとっては、異文化である展示物を興味津々でながめている。対して、日本で生まれ育って長い筆者にとって、ここは昔懐かしいマンガに触れ、埋もれた思い出を掘り起こすタイムマシンのような場所だ。そして、もっと若い層にしてみれば、少し前に刊行されて見過ごしてしまった作品を発見する宝探しの秘境といったところか。各人各様の楽しみ方があると言う意味では、当館のような博物館は珍しく、独特の魅力を放っている。少しでもマンガに興味があるのなら、来館をすすめたい。

京都国際マンガミュージアム
住所: 〒604-0846 京都市中京区烏丸通御池上ル (元龍池小学校)
営業時間: 10:00~17:00(最終入館は16:30)
休館日: 水曜日(休祝日の場合は翌日)、年末年始、メンテナンス期間
ウェブサイト: https://kyotomm.jp
X: @kyotomm
YouTube: https://www.youtube.com/user/kyotomm1

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Takuya Suzuki

老舗翻訳会社の役員を退任後、ライター、写真家、ボードゲームクリエイターとなる。神社仏閣・秘境めぐりをライフワークとし、撮った写真をInstagramに掲載している。@happysuzuki

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