ベル・エポック時代を感じられる展覧会がパナソニック汐留美術館にて開催中

「ベル・エポック―美しき時代 パリに集った芸術家たち」が、パナソニック汐留美術館にて2024年10月5日(土)〜 12月15日(日)の約2ヶ月間開催される。

「ベル・エポック展」 ポスター

この展覧会では、19世紀末から1914年頃までのパリが芸術的にもっとも華やいだ「ベル・エポック(Belle Époque)」から1930年代に至る時代の美術、工芸、舞台、音楽、文学、モード、科学といったさまざまなジャンルで花開いた文化のありようを重層的に紹介する。絵画のみならず、当時の女性や子どもたちの衣服や装身具、ガレやラリックの工芸作品、シャルル・ボードレールの初版本や、マルセル・プルーストの自筆書き込み校正刷など、多様な分野の作品を鑑賞できる貴重な機会となっている。

第1章 古き良き時代のパリ – 街と人々

パリは、1870~71年の普仏戦争をうけフランス第二帝政が崩壊した後、半世紀近く平和と政治的な安定を享受した。平和な時代には文化が花開くというのは世界共通で、この時代にオペラ座やエッフェル塔など、現在のパリの都市景観を象徴する建造物が次々と完成し、巨大な近代都市へと変貌を遂げていった。

第1章では、当時のパリの暮らしを伝える絵画作品のほか、女性や子どもたちが身に纏った服飾作品、自宅を飾ったマイセンやアール・ヌーヴォーの工芸作品などが展示されている。

展示風景

第2章 総合芸術が開花するパリ

パリ北部の小高い丘に位置するモンマルトルは、美術や文芸、音楽、演劇などに携わる多彩なアーティストたちがジャンルを越えて交わり融合したベル・エポックを象徴する地区だ。ムーラン・ルージュなどのキャバレーやダンスホール、カフェ・コンセールが軒を連ね、歌やダンス、大道芸が供される歓楽街として賑わっていた。

第2章では、そんなモンマルトルにインスピレーションを受けたロートレック、ロダンといった芸術家たちや、ボードレール、プルーストといった文筆家たちの作品を見ることができる。

展示風景

モンマルトルは19世紀から20世紀に行われた都市整備事業(パリ大改造)で面積を拡大した際に新たに併合された地区だ。19世紀半ばまでのパリの街は人口密度が高く不衛生で、コレラなどの疫病がしばしば蔓延していたため、大規模な都市整備が行われたのだ。その際、区画整備によりパリ中心部を離れざるを得なかった労働者たちや、賃料の安いアトリエが欲しかった芸術家たちが集まったのがモンマルトルだ。パリ中心部の確立されたブルジョワ的価値観から物理的に遠かったこともあり、アヴァンギャルドで自由な芸術活動の中心地となっていった。

若い美術家、文学者、作曲家たちが活動拠点にしていた伝説のキャバレー『シャ・ノワール』 のポスター。
テオフィル=アレクサンドル・スタンラン《シャ・ノワール》1896年 /デイヴィッド・E.ワイズマン&ジャクリーヌ・E.マイケル蔵
© Stéphane Pons

第3章 華麗なるエンターテイメント 劇場の誘惑

モンマルトルをエンターテイメントの中心地としてさらに強化させたのが劇場だった。その最たる例が、自然主義演劇を多く上演したテアトル・リーブル(自由劇場)。エミール・ゾラの小説に基づいた演劇や、ノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンの作品など野心的な演劇作品が上演されたことに加え、上演目録用の挿絵や舞台装飾に様々な芸術家が関わったことで、モンマルトルを拠点としたたくさんのコラボレーションが生まれた。

1枚目:ジュール・シェレ《ダンス》1891年 《音楽》1891年頃、他
2枚目:アンリ=ガブリエル・イベルス 挿絵付き上演目録 1893-1894年、他

第4章 女性たちが活躍する時代へ

世紀末のパリではフェミニズム運動も高まりを見せ、社会的自立を目指す女性が登場する。1903年には物理学者のマリー・キュリーが、放射線の研究でノーベル賞を受賞。芸術の分野は、メアリー・カサットやシュザンヌ・ヴァラドンのような女流画家があらわれ、また、舞台芸術では女優のサラ・ベルナールが人気を博し、ミュシャのさまざまなポスター芸術が生まれた。ミュシャがデザインし、ラリックが制作した舞台用冠は必見だ。

アルフォンス・ミュシャ《サラ・ベルナール》 1896年 /堺 アルフォンス・ミュシャ館(堺市)蔵[ 展示期間:10/5~11/12 ]

そして女性の社会進出を象徴するかのように、ファッションや装飾美術は優雅な曲線美から活動的なスタイルへと移行していく。本章では、当時、自身の才能を発揮した女性たちにまつわる作品や、アール・デコ期の服飾作品や、ルネ・ラリックの作品が展示されている。

ルネ・ラリックによる装飾品の数々

私はこの展示会を鑑賞している最中、『ミッドナイト・イン・パリ(2011)』という映画を思い出していた。ウディ・アレン監督作品で、主人公が1920年代やベル・エポック時代のパリにタイムスリップし当時のアーティストたちと交流するという、私の妄想を映像化してくれたのかと思うようなストーリーだ。
この展示会に行かれるかたは、ぜひベル・エポック期のモンマルトルにタイムスリップし、アーティストたちのパーティに招待されたつもりで楽しんでほしい。

「ベル・エポック―美しき時代 パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に」
会期:2024年10月5日(土)〜 12月15日(日)
開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
※11月1日(金)、22日(金)、29日(金)、12月6日(金)、13日(金)、14日(土)は午後8時まで開館(入館は19:30まで)
休館日:水曜日(ただし12月11日は開館)
ウェブサイト:https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/24/241005/
*土・日・祝日は日時指定予約必須(平日は予約不要)

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ZEROMILE 編集部

知的好奇心旺盛なミレニアル世代に日本の情報を発信。 「好奇心が心理的距離をゼロにする」をテーマに、編集部がピックアップした情報を掲載。

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