文化学園創立100周年記念「日本服飾の美」 開催中

文化学園服飾博物館では、特別展「日本服飾の美」を6月17日~8月6日まで開催中だ。

学校法人文化学園は、2023年に創立100周年を迎えた。1923年(大正12)に「文化裁縫女学校」が日本初の洋裁教育の各種学校として認可されたことが始まりで、その後、文化服装学院、文化学園大学へと発展し、服装教育の中心的存在としてファッション業界に多くの人材を送り出してきた。

すぐれた実物資料による教育・研究をめざして資料の収集が積極的に進められ、1979年(昭和54)に文化学園服飾博物館が開館。中でも日本の服飾に関する資料は質、量ともに充実し、国内有数のコレクションとなっている。本展は「日本服飾の美」としてそれらを見ることのできる貴重な機会となっている。

展示の構成は「宮廷装束」「小袖」「武家服飾」「能装束」。公家、武家、町方の中でそれぞれの制度やしきたり、美意識や気風から生み出した日本独特の文化であり、精緻な染織技術や優美な色彩美にあふれている。

間近で見ることのできる宮廷装束

1Fには、平安時代の貴族を思わせる束帯や十二単が展示されている。これらは、平安時代中期以降に文化の国風化が進められ、大陸の影響が強かった服飾から日本独自の服飾(装束)を着用するようになったのが始まりだ。
装束は、衣服の形態や組み合わせにより、男子では束帯(そくたい)、衣冠(いかん)、直衣(のうし)、狩衣(かりぎぬ)など、女子では女房装束(十二単)、小袿(こうちき)などの種類があり、有職(ゆうそく)織物と呼ばれる品格の高い独自の紋織物で仕立てられている。

芸術作品のような小袖

2Fは、「小袖」「武家服飾」「能装束」が展示されている。
小袖とは現在の着物の古い呼び方で、その起源は平安時代中葉にさかのぼり、公家階級の広袖の装束に対して小袖と呼ばれており、元は下着および庶民の日常着だったものが、一般的に着用されるようになったものだと考えられている。
展示は、江戸時代きっての豪商であった三井家旧蔵の江戸時代末期~明治時代初期の小袖が中心だ。円山派の絵師の下絵に基づいて制作されたものなども含まれており、巧みな刺繍や絞り染によって写実性と装飾性とが調和した意匠が見事に表現されている様は、芸術作品と呼ぶにふさわしい。

最期に臨む武士の美意識

武家の服飾は上下揃いで、麻が多く用いられ、無地や型染めが多く、質実剛健の精神による独自の美意識が感じられる。その反面、陣羽織や具足など戦での装いは、羅紗や金襴など渡り物を多用し奇抜なデザインが多く見受けられる。
展示されていたものは、江戸時代中期以降のものが多く、実戦からは離れてしまっているものの、命をかけて最期の場に臨む武士の晴れの衣装としての性質を強く表している。

大老・井伊直弼も愛した能装束

能は、江戸時代以降、幕府の式楽(儀式に用いる楽)とされたことから隆盛を極め、将軍や大名の財力を背景に贅を尽くし、洗練され様式化した芸能衣装となった。役柄によって装束の種類、模様、色、着装の仕方などが決められ、各大名も能楽についての深いたしなみが求められた。

文化学園服飾博物館には近江彦根藩主・井伊家に伝来した能装束が所蔵されている。井伊家は能楽に力を入れ、幕末の大老・井伊直弼(1815-60)も喜多流の能を好んだ。展示されているのは江戸時代後期から明治、大正にかけてのもので、唐織(からおり)、厚板(あついた)、縫箔(ぬいはく)をはじめ、ほぼすべての種類を網羅し、多様な演目に対応している。

新宿駅から徒歩10分ほど、30分~1時間ほどで見ることができるため、新宿駅周辺に訪れる予定があれば、ぜひ立ち寄ってみてほしい。
日本の伝統技術の美しさに触れることで、日本人特有の美意識について考えるきっかけになるだろう。

文化学園創立100周年記念「日本服飾の美」
会場:文化学園服飾博物館
所在地:〒151-8529 東京都渋谷区代々木3-22-7 新宿文化クイントビル 1階 
会期:2023年6月17日~ 2023年8月6日 (前期:6/17~7/8、後期:7/10~8/6)
開館時間:10:00~16:30 7/7、7/21は19:00まで開館
休館日:日曜日・祝日、6/26は閉館、6/18、7/16、7/30、8/6は開館
入館料:一般500(400)円、大高生300(200)円、小中生200(100)円
*( )内は20名以上の団体料金
* 障がい者とその付添者1名は無料
ウェブサイト : https://museum.bunka.ac.jp/exhibition/exhibition5002/

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ZEROMILE 編集部

知的好奇心旺盛なミレニアル世代に日本の情報を発信。 「好奇心が心理的距離をゼロにする」をテーマに、編集部がピックアップした情報を掲載。

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