東急歌舞伎町タワーのアートプロジェクト | 街の歴史をつむぎ非日常へ

4月14日開業の東急歌舞伎町タワー。「“好きを極める場“の創出」をコンセプトに、ホテルおよび映画館・劇場・ライブホールなどのエンターテインメント施設などからなる、地上48階・地下5階・塔屋1階、高さ約225mの超高層複合施設だ。

ⒸTOKYU KABUKICHO TOWER

街と空を繋ぐアートプロジェクト

大衆娯楽文化の街・歌舞伎町の中で文化発信を続けてきた新宿TOKYU MILANO(新宿ミラノ座)の系譜を受け継ぐべく、施設内各所に、新宿・歌舞伎町とゆかりのある作家をはじめとした26組の作家により制作された作品を展示し、訪れる人にアートを通じて街の記憶に触れる機会を提供する。

このアートプロジェクトの監修として、国内最大規模の芸術祭「あいちトリエンナーレ」にて長年地域との親和性が高いアート展示を経験してきた拝戸雅彦氏、歌舞伎町と関係性の深い篠原有司男氏やChim↑Pom from Smappa!Groupをはじめとした多様な作家との協働を行う、現代アートギャラリーのANOMALYが参画。

展示作品は、低層付近では「混交、時間、動、街・路上、土、活動的、日常」を、高層部では「透明、無時間、静、異次元、空、リラックス、非日常」をテーマとし、街と空を繋ぐよう、かつ施設用途にも調和するよう配置されている。

新作品ゾーニングイメージ

街を感じる作品 

1階のエントランスでは、篠原有司男の「オーロラの夢」が出迎える。「ボクシング・ペインティング」と呼ばれる、絵筆の代わりにグローブに絵の具を浸しキャンバスをヒットして描かれたこの絵は、歌舞伎町の街のエネルギーを来館者に体感させる。

篠原有司男「オーロラの夢」 撮影:木奥惠三

続いて現れるのが、森山大道の作品「Untitled 「Shinjuku」シリーズより」4点が並ぶ廊下だ。半世紀以上にわたり新宿という街、路上に魅せられてきた森山氏の写真は、都市の欲望や身体性をあまねく捉え、唯一無二の独創性に富んでいる。

森山大道 「Untitled 「Shinjuku」シリーズより」

1階にはこのほか、新城大地郎「東京、愛の森」、佐々木類「忘れじの記憶」なども展示されている。

2階のエントランスには、Chim↑Pom from Smappa!Groupの「ビルバーガー」が配されている。
解体直前の「歌舞伎町ブックセンタービル」で2016年に行ったプロジェクト「にんげんレストラン」で制作した、ビルの全フロアを切り抜き、そのままに積み重ね、ビル内の残留物を間に挟み込んだ彫刻作品だ。

Chim↑Pom 「ビルバーガー」

17階の「JAM17 BAR」には、バーカウンターの真上に西野達の「新宿」が。
区役所のスチール棚、紀伊國屋書店で長年使用されていた歴史あるテーブル、二丁目ゲイダンスクラブのキャッシャー台、新宿の名称の由来となった宿を象徴するホテル家具、タワーの建設地付近の路上で長年新宿を照らした街灯など、新宿で実際に使われていた家具や日常品を使用して作られた立体作品だ。

西野達「新宿」 撮影:木奥惠三

この他、地下のZERO TOKYOのダンスフロアには足立喜一朗の「Hollow Moon (Ring)」、屋外ビジョンにはムラタタケシの「Kabukicho Larry」が大画面で映されている。

足立喜一朗「Hollow Moon (Ring)」 撮影:木奥惠三

ムラタタケシ「Kabukicho Larry」 撮影:木奥惠三

新宿ミラノ座の名前を継承する6〜7階の劇場「THEATER MILANO-Za」では、SIDE COREの作品が楽しめる。
鹿児島にあるしょうぶ学園の工房で創作する作家23名と、SIDE COREのコミュニティの作家が参画し、さまざまな形と色、素材の絵画、文字、刺繍などのアート作品で3箇所の壁を彩る「Juxtaposition」。

フロアのタイルには、巨大な手や足跡、鍵などの絵柄が削り出された作品「Patchwork my city」が。巨大な掌は指紋に重ねて東京の地図やドローイングがコラージュされており、巨大な地図の上を歩きまわるように作品を鑑賞することができる。

SIDE CORE×しょうぶ学園「Juxtaposition」

SIDE CORE「Patchwork my city」 撮影:木奥惠三

10階の「109シネマズプレミアム新宿」内のプレミアムラウンジ「OVERTURE」には竹中美幸の「ミラノ座の記憶」10点が飾られている。一見すると輪郭が曖昧で図像がぼやけ抽象的だが、よく見るとミラノ座にまつわる様々な断片が繰り広げられている。目を瞑った時に浮かぶぼんやりとした画像のように、見る者それぞれが自身の中に眠る記憶にアクセスできる。

竹中美幸「ミラノ座の記憶」 撮影:木奥惠三

このように、写真や絵画、映像、立体作品などが施設に溶け込むように配されており、若手から巨匠までさまざまなアーティストの作品を見ることができ、現代アートの展示としてもかなり見応えがある。

今後は、アート作品の展示だけではなく、アートツアーやホテルとの連動企画を実施することで、偶発的な都市文化体験を可能にする構想だ。

非日常空間を彩る作品

また、「HOTEL GROOVE SHINJUKU, A PARKROYAL Hotel」(18〜38階)では、開発好明氏、玉山拓郎氏、鷲尾友公氏とコラボレーションをしたアートルーム「GROOVE ROOM」に泊まることができる。3作家×3部屋の全9部屋は、新宿・歌舞伎町の街や文化をテーマにしたコンセプトルームで、家具なども含め全室異なる仕様となっている。客室内テレビでは、ぬQ氏が制作したホテルブランドムービーが宿泊客を迎え、ホテルステイの始まりを盛り上げる。

開発好明「アーティストルーム/カセットテープ」

<予約情報>
・予約開始日:2023年4月3日(月)~
・宿泊開始日:2023年5月19日(金)~
公式ウェブサイト:https://www.panpacific.com/ja/hotels-and-resorts/hotel-groove-shinjuku.html

39~47階「BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel」の客室は、ラグジュアリーな空間に溶け込むように作品が配置されている。窓から見える新宿の景色との一体感が、ここでしか得られないインスピレーションを与えてくれるだろう。

細倉真弓「XXX」

荒木経惟「Flower Rondeau」

野村佐紀子「十代目松本幸四郎 残夢」

また、宿泊した際には、エレベーターホールに飾られた青木野枝の「水の光」、レストランフロアの大巻伸嗣「Gravity and Grace: Lucidus (Lucida)」も見逃さずにチェックしてほしい。

青木野枝 「水の光」

大巻伸嗣「Gravity and Grace: Lucidus (Lucida)」

次世代複合エンターテイメント施設として注目の「東急歌舞伎町タワー」。
さまざまな目的を持って訪れる人々が交流し、お互いの「好き」がクロスオーバーして新たな興味が広がる体験ができる場所になりそうだ。

東急歌舞伎町タワー
住所:〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町1丁目29−1
オフィシャルウェブサイト:https://www.tokyu-kabukicho-tower.jp

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Orie Ishikawa

ZEROMILE編集担当。 歴史、文学、動物、お酒、カルチャー、ファッションとあれこれ興味を持ち、実用性のない知識を身につけることに人生の大半を費やしている。いつか知床にシャチを見に行きたい。

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